“健康被害”拡大で大揺れ「小林製薬」…過去の“炎上案件”に学ぶ、企業が「釈明会見」で語るべきこと

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全面的な謝罪の必要性

 同サプリは悪玉コレステロール値を下げることを謳っているが、腎臓病とコレステロール値には関連性がある。阿部教授が診断した患者も元々腎機能に問題があったからサプリを飲んでいたかもしれないし、慢性腎臓病患者は日本に1330万人(成人の8人に1人)もいる。それなのにこの50代~70代の3人に共通していたのが、同じサプリだったということから、阿部氏は顔出しでメディア出演をし、小林製薬の紅麹サプリが疑わしい、と語った。 被害の拡大を食い止めたいとの思いは理解できるが、この時点で紅麹が悪者であるかのようにと断じるのは早すぎたように思えるのだ。実際、9日に会見を開いた日本腎臓学会の南学正臣理事長は「多くの人は摂取をやめるだけで、腎機能が改善している。必要以上に怖がらなくてもいい」と冷静な対応を求めている。

 小林製薬の姿勢は誠実ではあるものの、因果関係がまだ分からないものなのだから、会見で全面的に謝罪する必要はなかったのではないか。もちろん、会見は開くに越したことはないが、あくまでも「調査中」という表現にとどめた方がよかったように思うのだ。そうすれば、少なくとも「紅麹=危険」というイメージはここまで拡散しなかっただろう。今後、仮に健康被害との因果関係が薄いことが明白になっても、厚労省もメディアもその判断や報道姿勢が問題だったとは認めないだろう。何しろ決めつけのような報道をし、役人も大勢で工場に出入りするところを大々的に見せたのだから。

3万円分買った

 地方の局は県内の患者数をこぞって報じ「わが県でも出ています!」と煽る煽る! その間に、購入者が体の不調をこのサプリのせいにして、賠償請求する事態に発展したらこれは取り返しがつかないことになる。過去の事例を振り返ると、サプリのせいにすればお金がもらえる、と考えてやらかす人間が出てもおかしくない。

 この件で思い出すのが「西友偽装肉返金事件」だ。2002年、スーパーチェーン・西友が輸入された牛肉や豚肉を国産と偽装していたことが発覚。その時、レシートなしでの返金をすると発表したところ、札幌の店舗に人が殺到。本来1300万円ほどの売り上げだったが約5000万円を支払う結果となった。この時は暴力団関係者がススキノにたむろしている若者を雇い、彼らを店に行かせ、「3万円分買った」などと申告させたのである。

 西友はさすがにレシートは捨てていると判断したことと、お詫びの気持ちもあっただろうし性善説を信じていたためレシート不要だとした。その判断はすぐに大間違いだったことが分かる。国産の牛肉が100グラム398円だとした場合に、輸入牛は198円~298円といったところか。返金をするというよりは、「お詫びセール」をするぐらいでよかったのではないだろうか。

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