「ケチさと目ざとさにかけては天下一品」「製薬会社とは名ばかり」 小林製薬の強欲すぎる企業体質とは【紅麹サプリ問題】
「ケチさと目ざとさにかけては天下一品」
小林製薬は偶然、運悪く事件を起こしてしまったわけではあるまい。大惨事が起きた背景にある特異な企業体質について、同社関係者はこう明かす。
「そもそも、小林製薬は社名に“製薬”と銘打っていますが、処方箋が必要な医療用医薬品を取り扱っていません。商品はすべて薬局などで買える一般用医薬品か健康食品、または日用品の類です。製薬会社とは名ばかりで、本当の姿はケチさと目ざとさにかけては天下一品の小林一雅会長(84)が率いてきた、“アイデア商品屋”なのです」
1919年に設立された同社は、6代にわたって創業家の小林家が経営してきた。かつては薬品の卸売りが主力事業だったが、現代表取締役会長の一雅氏が60年代以降、アイデア商法路線に舵を切り数々の商品をヒットさせて会社を拡大し現在の礎を築いた。
「甲南大経済学部を卒業して62年に入社した一雅さんは自らのアイデアで、69年にトイレ洗浄剤のブルーレットを、75年にはトイレ芳香剤のサワデーを発売して成功させました。まだ日本のトイレの多くがくみ取り式だった64年、アメリカを旅行した時に見た水洗トイレの清潔さや芳香剤の爽やかな香りが、イメージの原点になったと」(同)
75年には、肩こりに効く鎮痛消炎剤の容器を横に曲げ、商品名をアンメルツヨコヨコとして、これもメガヒットに導いたという。76年に4代目社長に就任して以降も、冷却ジェルシートの熱さまシートや洗眼薬のアイボンなど数多くのアイデア商品を、ユニークなネーミングと共に世に送り出していった。
「常々、一雅さんは“小さな池で大きな魚を釣る”というスローガンを述べてきました。これはニッチな市場を開拓し、そのシェアを先んじて押さえる経営戦略です。誰も訪れていない小さな池を見つけて、そこで一番の釣り人になりなさいと。儲かったからといって、長い時間を要し高額な研究開発費を投じなければいけない、医療用医薬品を作るようなことはしない。それよりも社内提案制度を通じて、社員たちにアイデアを出す意識と習慣を徹底させていったのです」(同)
企業のガバナンスに大きな欠陥が
04年、弟の小林豊氏に5代目社長の座を譲ると、一雅氏は会長に繰り上がった。13年以降は、長男の小林章浩氏(52)を6代目社長に据えている。19年に豊氏は死去したが、今も一雅氏は代表取締役会長として君臨し続けている。
「カリスマ経営者の一雅さんは一般の社員に声を荒らげるようなことはさほどしませんが、幹部には厳しい。会議で中途半端な提案が出ようものなら、平気で罵声を浴びせます。特に息子の章浩さんには容赦がなかった。ある時、100名以上は集まっていた業界団体の新年会で章浩さんがきつく怒られて、しゅんとしていたのが印象的でした」(同)
このたびの紅麹サプリが原因と思しき健康被害について小林製薬は、今年1月11日に患者から最初の連絡を受けている。しかし、記者会見を開き被害の実態と自主回収を公表したのは2カ月あまりがたった3月22日のことだった。亡くなった5名の中には、この間にもサプリを購入していた人がいたとみられている。
企業ガバナンスに詳しい青山学院大名誉教授の八田進二氏はこう憤る。
「食品や薬を取り扱う企業にとって最大のリスクは健康被害で、そのダメージを最小限に抑えるためには迅速な情報公開が必須です。まずは健康被害を広がらせないための対策を優先するのは当然のこと。社内の人間はどうしてもネガティブな情報を隠蔽(いんぺい)したり問題を先送りしたりしがちなので、そうならないためにも高額な報酬で社外取締役を選任しているわけですが、このおよそ2カ月間あまり彼ら彼女らは何をやっていたのでしょうか。社外取締役も含めた企業全体のガバナンスに大きな欠陥があったと言わざるを得ません」
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