テレ東が開局以来の快挙…フジを抜いて「初の最下位脱出」がさっぱり話題にならないのはなぜか
収益と世帯視聴率は比例しない
コア視聴率の良い日テレが断トツ。テレ朝はやや高く、TBS、フジにそう大きな差はない。テレ東は後れを取っている。なぜ、コア視聴率が良いと、CM売上高が高くなるのか。
それはCMの出稿意欲の高い業種には若い世代を狙う携帯電話会社やプロバイダー、ゲーム会社、テーマパークなどのレジャー産業などが並ぶからだ。
ちなみに「今、テレビ局にとっては動画が一番重要な時代」と言う向きもあるようだが、それが現実のものなるのはまだ先。TVerなど無料動画の全収益はCM売上高の約30~50分の1に過ぎない。
テレビ局は公共性が極めて強い業種であるものの、それでいて株主のいる民間企業でもある。収益を上げるため、若い視聴者を狙うのは仕方のない面もある。どんな業種にもターゲット層はある。
半面、地上波の放送に満足できない中高年以上に向けて2000年に誕生した各局のBS局で、番組内容が十分とは言えないのも事実。いくらCMが入らないからといって、プライム帯(午後7時~同11時)に古い2時間ドラマの再放送はいただけない。見直すべきだ。
また、視聴率に対する理解を深める努力もすべき。たとえばフジの月9「君が心をくれたから」(3月末終了)やTBS「不適切にもほどがある!」は世帯視聴率の低さが指摘された。関係者は不本意だろうが、世帯視聴率がもう使われていないことやその特性を丁寧に説明しないからだ。
3月18日放送の「君が心をくれたから」の最終回は世帯視聴率が6.6%。パッとしなかった。しかし、コア視聴率は2.5%で、この週放送されたドラマの中で3位だった。
同23日放送の「不適切にもほどがある」の世帯視聴率は7.4%。やはりイマイチだった。だが、コア視聴率は2.6%で、この週のドラマで2位だった。
視聴率が2つある紛らわしさ
なぜ、高齢者好みの番組のほうが、世帯視聴率が高くなるのか?
ビデオリサーチ社は調査を行うにおいて、社会の実情をなるべく反映させようと努めている。その社会の実情はどうなっているのかというと、トレンディドラマ全盛期の1990年には、65歳以上の高齢者のいる世帯は全体の26.9%だった。全体の約4分の1である。
しかし、世界に類を見ない少子高齢化によって、2021年には高齢者世帯率が49.7%にまで上昇した。全体の約半分だ(内閣府調べ)。高齢者好みの番組の世帯視聴率が高くなるのは当然なのである。
逆に、数の少ない若い世代に向けた番組は世帯視聴率が低くなる。愛する人への犠牲心をテーマにした「君が心をくれたから」やナンセンスコメディ色も強かったTBS「不適切にもほどがある!」は高齢者にウケが良くなかった。だから両ドラマとも世帯視聴率は獲れなかった。
視聴率が2つあることで視聴者にもたらされるメリットは考えられない。紛らわしいだけ。ちなみにテレビ先進国の米国は1990年には個人視聴率を導入し、世帯視聴率など存在しない。
「世帯視聴率は1962年に生まれたから、過去の数字と比較できる」と言う向きもある。しかし、世帯数や高齢者世帯率、家族人数が激変したのだから、今と昔を比べてもデータとして役に立たない。急ピッチで進行している少子高齢化があるから、10年前と比較することすらナンセンスだ。
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