【袴田事件再審】検察側証人・九大名誉教授が“仰天発言” 巖さんの姉は「苦し紛れに聞こえました」

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歴史的な決定から10年目に現れた村山元裁判官

 公判3日目となった27日は、法廷の外が盛り上がった。弁護士で元裁判官の村山浩昭氏が静岡地裁前に姿を見せたのだ。ちょうど10年前のこの日、村山氏が裁判長を務めていた静岡地裁の合議体が袴田事件の再審開始と巖さんの拘置の停止という歴史的な決定を出したのである。以来、巖さんは自由の身になった。

 退官後、東京で弁護士として活動する村山氏は、袴田事件の傍聴のためではなく再審法の改正を訴える日弁連の「再審法改正実現本部」のメンバーの1人として啓発活動のために静岡にやってきた。街宣活動に参加し、資料が入った布バッグを市民に配ったり、近著の販売では購入者に丁寧にサインをしたり、懇親会にも気さくに参加するなどの姿に支援者たちも感激の様子だった。

 元裁判官で多くの無罪判決を書いてきたことで知られる弁護士の木谷明氏も駆け付けた。86歳とは思えないかくしゃくとした姿で、「戦後、一般の刑事裁判は裁判官の権限が強かった戦前の職権主義から(検察側と弁護側が中心になって主張を述べ合う)当事者主義に変わりました。ところが、再審では職権主義が残ったままになっているんです」と法の構造上の問題点を説明した。

 この日、法廷では検察側と弁護側の双方の証人に裁判官が質問する「対質尋問」が行われた。裁判官が「当時の状況を踏まえて赤みが残る可能性は?」と尋ねると、弁護側の証人の清水教授は「科学者として実証実験を行い、より起こりえる現象を結果として導き出しています。赤みは残りません」と念を押した。これに対し検察側の証人の神田教授は「可能性がないとは言えません。弁護側が赤みが残らないと断言していることに違和感があります」と話した。実験を行った上の反論でないなら、印象論でしかない。

 立ち返って、仮に「赤みが残る可能性が残る」が認められたところで、「疑わしきは被告人の利益に」の刑事司法の原則から、巖さんは無罪なのである。本来、検察には「絶対に赤みが残る」を立証する責任がある。立証もできず、「可能性がある」としか言えない段階で勝負はついている。

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