「山崎製パン」約10年で4人の死者が… 大手スポンサーにメディアは忖度、取材に笑いながら「調査いつ終わるかも分かっていません」
「ベルトコンベアーに巻き込まれ、胸を強く圧迫」
誰もが知る「ロイヤルブレッド」などの食パンや「まるごとソーセージ」といった総菜パンなどを製造・販売し、私たちの食卓に欠かせない存在となっている「山崎製パン」。ヤマザキグループとしての総売り上げ1兆円超、国内シェア4割を誇るパン業界のガリバーである同社の工場で先般、死亡事故が起きていた。しかし、一部のメディアを除いてこの事故を大きく報じていない。山崎製パンの知られざる「体質」とは――。
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問題の事故が起きたのは今年の2月24日。千葉市内にある山崎製パン千葉工場において、アルバイトの加藤静江さん(61)がベルトコンベアーに巻き込まれて死亡したのである。
「加藤さんは菓子類の製造作業中にベルトコンベアーに巻き込まれ、胸を強く圧迫されたとみられています。午前10時20分ごろ“女性がベルトコンベアーに挟まれ、意識がない”と工場の関係者から119番があり、病院に搬送されましたが死亡が確認されました」(全国紙社会部デスク)
ちなみにこの事故は一部の新聞などが報じたことで発覚。山崎製パンは今にいたるまで事故に関して何ら発表していない。
捜査関係者が明かす。
「事故が発生したベルトコンベアーは複数の菓子を載せた鉄板が運ばれていくものでした。何らかの理由でその菓子がこぼれ落ち、すぐに駆け付けたのが、別の機械で作業中だった加藤さんでした。加藤さんはベルトコンベアーを止めずに、コンベアー内の菓子を取ろうとしたようです」
そして不幸にも、
「ベルトコンベアーのバーに右腕を挟まれた上で奥に引き込まれ、支柱の部分に胸が挟まって圧迫される格好になってしまったのです。ベルトコンベアーの幅は20~30センチくらい。安全カバーなどは付いていませんでした」(同)
笑いながら取材に答えた広報部門担当者
しかも、山崎製パンの工場での死亡事故は今回に限らず、2020年には神戸工場(兵庫県)、15年には古河工場(茨城県)、12年には伊勢崎工場(群馬県)で死者が出ている。にもかかわらず、メディアで大きく報道されないのはなぜなのか。
山崎製パン元幹部はこう語る。
「山パンは毎年、テレビなどに莫大な広告宣伝費を支払っています。テレビとしては大手スポンサーである山パンに配慮し、不祥事があっても大きく取り上げない、という事情はあるでしょう」
実際、山崎製パンは過去、何件もの「回収事案」を起こしているが、それもテレビで大々的に取り上げられたことはない。
果たして山崎製パンは、千葉工場で加藤静江さんが亡くなった事故をどう捉えているのか。「週刊新潮」の取材に対面で応じた同社広報部門の担当者に、今回の死亡事故について公表するつもりはないのかと聞くと、
「今はだから、発表してませんでしょう」
現在、労働基準監督署の調査が続いているという。それが終わったら事故を公表するつもりがあるのかと尋ねると、あろうことか、笑いながらこう答えたのだ。
「調査いつ終わるかも分かっていませんし、調査が来週終わるんだったら、さあどうしようかと今検討する機会になると思いますよ」
さらに、過去に死亡事故がどれくらいあったのかと聞くと、
「いやそんなないですよ」
そう答える。そこで、“そんな”の部分を具体的に教えてほしい旨伝えると、こう述べたのだ。
「10年さかのぼればありますね」
10年さかのぼるどころか、4年前に神戸工場で死亡事故が起こっていたことは先述した。それについて改めて書面で問い合わせると、「誤解を与えてしまい、大変失礼いたしました」との返信が寄せられた。重大な死亡事故に真摯に向き合っているようにはとても見えないのだ。
4月11日発売の「週刊新潮」では、過去に山崎製パンが起こした回収事案のリスト付きで、1兆円企業である同社の「体質」を5ページにわたって詳しく報じる。