JUJU、中山美穂、工藤静香……華原朋美が「本当に大変でした」というカバーとは 「いつかヴィジュアル系覆面バンド」という野望
憧れの工藤静香の楽曲は高校時代にマスター!GLAYのカバーは「自分でも冒険だった」
なお、カバーアルバム第1弾の『MEMORIES』では、華原自身が学生時代に憧れ、歌手デビュー前のオーディションでも何度も歌った中山美穂と工藤静香の楽曲もカバーしている。このうち、中山美穂の「You're My Only Shinin' Star」(第11位)はバラードの定番だが、カバーされることが多い工藤静香の楽曲の中で「千流の雫」(第50位)を歌っているのは、’24年現在、華原のみだ。どういったこだわりがあったのだろうか。
「私が高校生のとき、ちょうどカラオケBOXがはやりはじめました。そのころは、テレビをつければ静香さんや美穂さんがいつも歌っていて、私は指をくわえるような感覚で観ていました。その時代に、年に3枚ほど出されていた静香さんのシングル曲は、すべてマスターしちゃったんです!
静香さんといえば、中島みゆきさん作詞の楽曲が多いという印象で、例えば『黄砂に吹かれて』を歌うと、モノマネをやっちゃうんですよ。そこで、静香さん自身が(“愛絵理”名義で)歌詞を書かれ、静香さんの力強い部分が前面に出ている『千流の雫』を歌わせてもらいました。力強い中にも、間奏部分で女性らしさも垣間見えるのが好きなんです。でも、(ここで50位だということは)、まだ知らない方も多いんでしょうね」
さらに、カバーアルバム第2弾の『MEMORIES 2』では、GLAYの「HOWEVER」(第17位)やLUNA SEAの「ROSIER」(第22位)など、男性ロックバンドのカバーを披露。男性曲もロックバンドも、カバーするのは大きな挑戦だったようだ。
「あれは本当に大変でした! まず、私はGLAYさんやLUNA SEAさんを尊敬しているものの、仕事での接点が全くなかったんです。周囲からカバーを提案されたとき、自分でも冒険だなと思いつつ、飛び込んでみました。GLAYさんの『HOWEVER』は最初、コンサートでカバーして、とても難しい歌だとわかって。レコーディングでは、変にカッコつけると逆にダサいし、フレーズの頭ごとにTERUさんのモノマネになってしまわないよう、サラっと歌うことを心がけました。『ROSIER』のほうは、弾けて歌えて楽しかったです! 実は、ヴィジュアル系バンドにはずっと憧れていて。いつか“華原朋美”という名前を伏せて、覆面バンドのボーカルとして歌えないか、今も機会を狙っているほどなんです(笑)」
息子のために、ファンのために。感謝を忘れず「常に進化した“華原朋美”を見せたい」
バラエティ番組では、時にキュートに、時にワイルド(?)に、芸人にも劣らないリアクションが人気の華原だが、こうして話を聞いていると、オリジナル曲でもカバー曲でも、真摯に歌と向き合っているのが印象的だ。
「歌手の方なら努力して当たり前のことだと思いますが、常に進化した“華原朋美”を見せたいんです。私自身が周囲の方々に助けていただいたことや、’90年代を代表するプロデューサーさんの楽曲が今でも支持され続けていることなどを振り返ったとき、それと、近年では平成のJ-POPが再評価されているのか、コンサート会場に中高生が来てくれるのを考えたとき、頑張らなきゃと覚悟が決まったんです」
また、現在4歳になる息子の存在も大きいという。
「昨年末に関東で開催したホールツアー5公演がほぼ完売だったことで、今度は全国ツアーの話をいただいているので、歌手として今しかできないことをやっていきたいんです。あと何年、高音の多い『I’m proud』や、テンポの速い『Hate tell a lie』を歌えるのかという課題にも向き合いつつ、引き際もきちんと考えたい。ギリギリあと10年から15年、どう頑張れるかだなと思っています。
その間、息子の成長を見守るためには、貯金も大事(笑)。以前なら、疲れて足がむくんだ、じゃあマッサージに行こう、って気楽でしたが、今はそういうことは一切できません。けれど、彼がすくすくと育っているのを見られることは、この上ない幸せなんです。この幸せが続きますようにという願いも歌に直結していて、時々、歌いながら泣きそうになるんですよ」
さらに、ファン目線を意識しての努力も忘れていない。
「そして、高いお金を払い、貴重な時間を使って来てくださっているお客様にも満足していただきたい。だから、ただ歌うだけじゃなく、ステージと一体化するために、いろいろな形で工夫しています。例えば、様々な音響や照明で演出しつつ、当時のカラオケ音源だけじゃなく、ピアノソロで歌ったり、バンドが入ってきたりと、変化をつけています。
最近では、TRFさんのカバー曲『ENGAGED』を歌ったのもサプライズのひとつですね。私自身、当時からシングル並みの名曲だと思っていたのですが、後からSNSのコメントで、“あの歌って、涙が出ちゃう!”、“探しに探してTRFさんのカバーだと知りました!”みたいな嬉しいコメントをいただいたので、今後もそういう名曲をセットリストに織り交ぜたいです。もちろん、自分のリリースした曲だけでも1時間半のコンサートが組めますが、カバー曲でも私なりの歌い方を見せることで、お客様の心に残るステージにしないと、きっと私もお客様も納得できない。そのためにはどうやって届けるのかいちばんいいだろうって、常に真剣に考えています」
話を進めるたびに、’90年代に天真爛漫な姿で歌やトークを披露していた“朋ちゃん”と本当に同一人物だろうかと思うくらい、自身のプロデュースに真剣に取り組んでいる姿がひしひしと伝わってくる。そこには周囲のスタッフや愛する息子、そしてファンの期待を裏切らないようにしたいという責任感が感じられる。
最終回となる第3弾では、ヒット・シングル以外のオリジナル曲や今後の活動について紹介していきたい。
【華原朋美「芸能界にしがみつきたいとは思っていない」 自身の楽曲への“辛口評価”と今後の展望から見える意外な素顔】へつづく
(取材・文/人と音楽を繋げたい音楽マーケッター・臼井孝)