「仕事にやりがいを感じる」は5%で145カ国中最下位! なぜ日本の会社員はやる気を失ったのか
扇風機の差
ダイソンの羽根のない扇風機が売り出された時、私たちはその画期的なアイデアと洗練されたデザインに驚き、購買意欲をかき立てられました。一方、日本のメーカーは相変わらず旧態依然とした羽根付き扇風機を生産しています。自分の親世代、下手をしたら祖父母世代が使っていた扇風機と機能もデザインもほとんど変わらないのではないかと思えるほどです。実はこの扇風機の差にこそ、労働生産性の本当の意味を読み解く鍵が隠されています。
「生産性」というと能率や手際の良し悪しをイメージしがちですが、経済指標としての「労働生産性」は厳密に定義されていて、数式で表すと次のようになります。
「生産性=生産量あるいは付加価値÷投入した労働力」
分子の「生産量あるいは付加価値」の中で、「労働生産性」を把握する際により重要なのは「付加価値」です。分かりやすく大雑把に言うと、「付加価値」は売上高から原材料費などの諸経費を引いた粗利益に相当します。仮に6万円の商品で5000円の原材料費などがかかっていたとすると粗利益は5.5万円。これが「付加価値」です。
そして分母の「投入した労働力」とは、やはり大雑把に言えばその商品を作るために働いた労働者の数ですから、分子である粗利益5・5万円の商品を100人で作ったとしたら、1人あたりの労働生産性は「5.5万円÷100人=550円」となります。
これまで私たちは「分母」ばかりに意識を向けさせられてきました。働く人たちの能率が悪いから日本の労働生産性は低いのだと。
独創性の淵源とは
しかし、これはおかしな話です。なぜ「分子」に目を向けないのでしょうか。A社とB社がそれぞれ、同じ100人が関わってひとつの扇風機を作ったとして、A社の製品が6万円でB社の製品が1万円だった場合、原材料費に極端な差がなく同じ5000円であれば、前者の労働生産性は「550円」で後者は「50円」と11倍もの差が出てしまいます。
実際、私が調べた時点では、ダイソンの扇風機は6万円程度で売られていて、昔ながらの日本の扇風機は1万円前後で売られていました。つまり、労働生産性は分子である商品の価格(付加価値)によって大きく左右されるのです。ダイソンの扇風機を例にとると、付加価値をもたらしたものは画期的なアイデアであり、洗練されたデザインといえます。要は、いかに「独創性に富んだ魅力的な商品=付加価値が高くて高額で売れる商品」を生み出せるかが、労働生産性を決める大きな要因なのです。
それでは、どうすれば魅力的な商品を開発できるのでしょうか。意欲を持った社員がいなければ「良い商品を作って売ろう」という発想すら生まれてこないのは自明といえるでしょう。やる気がない社員ばかりで活気がない会社から、独創的なアイデアが出てくるわけがありません。つまり、社員たちが熱意を持って、ダイソンの扇風機のような付加価値が高く、良い商品を生み出すことができれば、日本の労働生産性は上がるはずなのです。果たして、日本の労働者たちのやる気はどうでしょうか。
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