岸田政権下での日朝首脳会談は完全消滅…金与正が激怒した背後に金正日“忠誠派”

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北朝鮮は極度の経済難

 林官房長官の発言を、与正氏は岸田首相が指示したものと受け止めた。平壌では「だから日本人は嘘つきだ」とのウワサが流れた。この言葉には、「それも知らないのか」との与正批判が込められた。

 与正氏の「2・15談話」は、自分が「日本担当の責任者」であるとの、初の公式挨拶状であった。それなのに、日本にコケにされたとの感情が伝わる。

 北朝鮮は社会主義国家だ。労働党が政府省庁や軍を指導する。その意味では、岸田首相が主張してきた「首相直轄のハイレベルでの対応」は正しい。北朝鮮の外務省には、決定権限はない。金正恩氏と面会でき、直接報告できる人物が、北朝鮮では高官だ。それは与正氏しかいない。

 今回の挫折で、岸田政権下での日朝首脳会談は消えた。でも、北朝鮮は極度の経済難に直面しているから、また必ず呼びかけてくる。日本からの資金がないと、経済困難は打開できない。中国とロシアの北朝鮮戦略は「生かさず、殺さず」で、経済発展を望んでいない。発展した北朝鮮が言うことを聞かなくなるのは、中露の悪夢だ。

重村智計(しげむら・としみつ)
1945年生まれ。早稲田大学卒、シェル石油、毎日新聞社・ソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員を歴任。拓殖大学、早稲田大学教授を経て、早稲田大学名誉教授。東京神学大学大学院。朝鮮報道と研究の第一人者で、日本の朝鮮半島報道を変えた。著書に『外交敗北』(講談社)、『日朝韓、「虚言と幻想の帝国の解放」』(秀和システム)、『絶望の文在寅、孤独の金正恩』(ワニブックPLUS)、『半島動乱』(ビジネス社)など多数。

デイリー新潮編集部

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