妻と愛人が同居、想像しなかった二人の関係を知って…“何だかスッキリしない生活”を続ける52歳夫の本心

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妻を盗られたような気に…

 ある晩、ふと目を覚ますと隣のベッドに妻がいなかった。2階から物音がするような気がして行ってみると、容子さんの部屋から声が聞こえる。

「ドア越しに、やけに色っぽい妻の声が……。ショックだったのかな、やっぱり。ドアを開けるべきかどうか迷いました。でも開けずに下に降りて寝たふりをしたんです。そうするしかないと思った」

 妻と容子さんはただ、じゃれていただけかもしれない。しかし芳裕さんは焦った。妻を容子さんに盗られたような気になった。容子さんを妻に盗られたような気もした。ひとりにされるのはつらかった。

「用があって妻が実家に1泊したことがあるんです。当然、僕は容子さんの帰宅を待って、一緒に夜食をとり、一緒に寝ました。そのとき『翔子とはどういう関係なの?』と聞いたんです。容子さんはけっこうあっけらかんと、『ごめんね。私、バイなの』って。ついこっちも、あ、そうと言ってしまうような軽いノリでした。彼女は楽しそうだったけど、僕は苦しかった。自分の原点が、 20代の時の雑魚寝からの乱れた関係にあると思っていたけど、それはあくまでも男女の関係という枠の中の話。自分の妻と恋人が仲良くしていることを認めるわけにはいかなかった。結局、その程度の狭い人間なんだと思うけど」

 そんなことがあってからすぐ、容子さんは「いろいろ片付いたし、家も見つかったから、店の近くに住むわ」と出ていった。翔子さんはその晩、とても寂しそうだった。

「僕は今も、たまに容子さんの家に行っています。彼女がいいと言ったときだけ。でも部屋を見るとわかるんですよ、翔子も来ているなと。翔子は自分の持ち物をけっこう容子さんの部屋に置いているんです。僕が来ていることはバレてないと思うけど。まあ、容子さんがしゃべっている可能性もなくはないけど」

「翔子の口からきちんと聞きたかった」

 夫婦とそれぞれつきあっている容子さんは、何を考えているのだろう。芳裕さんもそう思って彼女に聞いてみたことがあるそうだ。

「でも容子さんは何も考えてないと言う。『ふたりとそれぞれ縁があっただけ』と。ふたりとも好きよとも言っていた。彼女に僕らが弄ばれていると思うこともあるんです。でも、離れたいとは思わない」

 自分と容子さんとの関係を、翔子さんにはしゃべらないでほしいと頼んではある。私は言わないけど、彼女は感じ取っているかもしれないと翔子さんは言った。そして、あなたが思っているほど翔子さんはウブじゃない、とも。彼女自身だってバイセクシャルなんだから、という容子さんの言葉が今もひっかかっている。

「バイが悪いわけじゃない。でもそのことは翔子の口からきちんと聞きたかったと思うんです。翔子自身が、自分でも意外だったということなのかもしれないけど……」

 とにかくすっきりしないのだと彼は言った。いつも妻の顔色をうかがってしまう一方で、容子さんとの関係を続けたいとも願っている。容子さんと翔子さんの関係を責めるつもりはないものの、常に不安と苦悩を抱えている日常が手放しで楽しめない。彼はどうなったら満足なのだろうか。そして事態が変わる日は来るのだろうか。

前編【あんなことがあったのに、次に会った時はみんなで平然と…妻と愛人と同居する52歳「変人夫」が明かす“性の原体験”】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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