妻と愛人が同居、想像しなかった二人の関係を知って…“何だかスッキリしない生活”を続ける52歳夫の本心
「さて、私たちはどうする?」
息子は18歳になり、希望する地方の大学に合格した。今から3年前のことだ。
「僕は息子が小学生のころから大人扱いしていました。男同士で話そうぜ、みたいな感じで接していたんだけど、息子にはそれがあまり愉快ではなかったみたい。『男同士、みたいに男を売りにしているようなおとうさんが苦手だった』と旅立つ前に打ち明けてくれました。僕の子育てもうまくはいかなかった。でも息子が僕を苦手だったと本音を言ってくれたことはよかったと思っています」
息子がいなくなってみると、リフォームしながら暮らしてきた家がやけに広く感じられた。
「その晩、妻が言ったんですよ。『さて、私たちはどうする?』と。これがまた衝撃でしたね。私たちはどうする、か……。淡々と生きていけばいいじゃないかと一瞬思ったけど、まだ50歳前でしたからね。ふたりで何か探してもいいのかもしれないと思った」
妻はその数年前から、友人が経営する飲食店を手伝っていた。昼間はカフェ、夜は食事もできるバーという店だ。ふたりで何か探したいと思っていた芳裕さんだが、そのとき妻は「夜も店で働きたい」と思っていたらしい。
「私が家にいないときは店に夕飯を食べにくればいいと妻が言い出し、そうすることにしました。妻が働くのを見ながら夕飯をとるのも悪くなかった。カウンターで店の子と話したり、他のお客さんと言葉を交わすこともありました。僕が店の子と話していると、妻がときどき睨むんですよ。妻が嫉妬していると思うと、少しうれしかったりして……」
なんだかんだ言っても長く連れ添っている妻への愛着はある。息子が離れて、妻が女に戻った気がしたと彼も言った。息子と母の絶対に切れない絆に嫉妬していたのかもしれないともつぶやいた。
オーナー女性の容子さん
妻は楽しそうに働いていた。オーナーである友人の右腕となっているようだった。
「お互いに好きなことをしようと、改めて妻と話しました。僕の食事の心配などはもうしなくていい。ふたりとも独身時代に戻ったつもりで自分の人生を第一に過ごそうと」
そうは言いながら、彼は妻が働く店についつい足が向いてしまったという。オーナー女性の容子さんとも親しく言葉を交わすようになった。
いつも世話になっているからと、容子さんを家に招待したことがある。1年半ほど前のことだ。コロナ禍で店が大変だった時期でもあった。たいしたものは作れなかったが、芳裕さんは、容子さんの気持ちを盛り上げるために腕をふるってローストビーフを作った。
「妻も容子さんも楽しかったのか、かなりワインを飲んでいましたね。容子さんは『タクシーで帰るから大丈夫』と言っていたけど、足がもつれていた。『送ってあげてくれる?』と妻に言われ、車を出しました。なんとなくそんなこともあるかと思って、僕はまったく飲んでいなかったんです」
容子さんは、芳裕さん夫婦より5歳ほど年上だった。若い頃に離婚したことがあるとか、シングルマザーだとか、いや、介護が必要な親と暮らしているらしいとか、いろいろ噂のある人だったが、私生活はほとんど明かさなかった。
「彼女の自宅はマンションでした。『部屋まで送ってくれる?』と言われました。素敵な部屋でしたよ。賃貸でひとり暮らしよと笑っていましたが、遠方に娘がいること、高齢の母親が施設にいることなどを話してくれました。『愛人やっているころもあったんだけどね』と言うから、ドキッとして顔を見たら笑っていた。真偽のほどはわかりません。店は父方の親戚が経営していたのを譲り受けたそう。翔子とは昔、パート先で同僚だったようです」
[2/4ページ]