あんなことがあったのに、次に会った時はみんなで平然と…妻と愛人と同居する52歳「変人夫」が明かす“性の原体験”

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「僕にとっては非常にエロティックな…」

 最終的に、母は自身の妹宅に引き取られた。叔母も夫に先立たれたばかりで、ふたりは当時60代だったが、仲良く暮らしていたそうだ。

「もともと3人暮らしの小さい家でしたが、僕はひとりで生活するようになりました。男女問わず、よく友だちを呼ぶようになりました。学生時代の友人だけではなく、飲み屋で知り合った人とか、仕事で親しくなった人とか。寂しかったんでしょうかね」

 ある日、友人数人と雑魚寝をしているとき、酔いも手伝ったのだろう、隣にいた女性が彼の体をまさぐり始めた。「あれやこれやがあって、結局、みんなで乱れまくってしまった」と彼は照れたように言った。それは大きな興奮だった。

「でももっと大きな興奮は、次に会ったとき、誰も何も言わず、普通の友だちに戻っていたこと。あれはみんなの中でなかったことになっていた。それが僕にとっては非常にエロティックな体験として残りました」

 20代後半にして、彼にとってはそれが「性の原体験」となった。日常と非日常が乖離していればいるほどエロティシズムが大きくなり、彼はそこに惹かれた。

人妻と交際した結果…

 27歳のとき、親戚からひとりの女性を紹介された。翔子さんというその女性は彼と同い年で、楚々としたタイプ。見合いはしたが、彼は断った。彼女が悪いわけではなく、結婚したい気持ちがどうしてもわいてこなかったのだ。

「実はそのころ、僕は人妻とつきあっていたんですよ。最初、あちらが遊び相手として僕を選んだようなところがあったんだけど、つきあっているうちにお互いに本気になった。僕の本当の初恋は彼女でしょうね。10歳くらい年上で優しくて激しくて、今思っても素敵な女性でした」

 ところが脇が甘かった彼は、半年足らずで彼女の夫に知られてしまった。「ボコボコに」殴られてそのまま彼女とは別れざるを得なくなった。

「結婚していると恋愛もままならないんだなと、なんだかひどく虚しくなったのを覚えています。人の気持ちなんて無理矢理どうにかできるものではないのに、結婚という枠があるだけで彼には僕を殴る権利があって、僕は彼から彼女を奪うことはできない。まあ、もっとも彼女自身が離婚までするつもりはなかったということなんでしょうけど。結婚が愛の最上級だという考え方が嫌でしたね」

 だがそれから2年後、彼は結婚した。相手は例のお見合いをした翔子さんだった。なぜか立て続けに翔子さんにばったり会ったことで、お茶でもということになり、それが続いて食事になり、彼女が家に来るようになった。自然な流れで結婚し、自然な流れで息子 が生まれた。

「薄々、僕は普通の人生が送れないのではないかと考えていたので、結婚して子どもが生まれたときは、意外と普通の生活ができるんだと安心したんです」

 翔子さんはおっとりしながらも内面はしっかりした女性だった。こうやって人は「普通の」生活をするようになるのかと彼も納得していたという。

後編【妻と愛人が同居、想像しなかった二人の関係を知って…“何だかスッキリしない生活”を続ける52歳夫の本心】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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