子どもに「耳が痛いこと」を言う人がいなくなった時代に親がすべきこと 現役スクールカウンセラーが警鐘

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親にこそ「慣れ」が必要

 読んでいてお分かりになると思いますが、こうした「イヤイヤ-関係性で納める」という構図は、前述した「問題と向き合う-支えられる」という関わりと相似形を成しています。「イヤイヤ」も「問題」も子どもにとって変えようがない「現実」であり、いずれも「現実に向き合ったときの苦しさを、関係性で支えてもらう」という形になっているのです。

 ここで一つ覚えておいてほしいのは、こうした「現実を伝え、その苦しさを支える」という関わりには「慣れが大切」ということです。

 個人差による得意不得意は多少あるにしても、親自身が「慣れる」「経験を積み続ける」ことが重要なんです。「イヤイヤ期」から、子どもの成長に合わせて幾度となく「現実を伝え、その苦しさを支える」という関わりが親子間で展開されます。そのたびに子どもがきちんと現実を見られるようサポートし、ときには押し返し、同時に粘り強く支えていく。こうした関わりの「練習」を「イヤイヤ期」から始めていき、親が親として成長していく機会と捉えておくと良いのです。

 なお、本稿の事例については、(1)本人および親から掲載許可が取れており、本質を失わないことに留意しつつ、個人情報が特定されないように改変を加えたもの、(2)いくつかの類似した事例を組み合わせたものであり、厳密にはフィクションになりますが、実際の事例と遜色のないものになっています。

「スマホ育児」の意外な悪影響とは “思い通りにならない”経験をしない子どもが直面する厳しすぎる現実】へつづく

藪下 遊(やぶした・ゆう)
1982年生まれ。仁愛大学大学院人間学研究科修了。東亜大学大学院総合学術研究科中退。博士(臨床心理学)。仁愛大学人間学部助手、東亜大学大学院人間学研究科准教授等を経て、現在は福井県スクールカウンセラーおよび石川県スクールカウンセラー、各市でのいじめ第三者委員会等を務める。「『叱らない』が子どもを苦しめる」(筑摩書房、高坂康雅氏と共著)を上梓。

デイリー新潮編集部

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