子どもに「耳が痛いこと」を言う人がいなくなった時代に親がすべきこと 現役スクールカウンセラーが警鐘
親だからこそ「問題と向き合う」姿勢を
こうした「時代の変化」の影響もあってか、子どもが「問題と向き合い、関わりの中で支えられる」という体験を得にくくなっています。そうなると「自分にとって都合の悪い現実を受け容れられない」という状態像が生じやすくなりますし、それを端緒として学校での不適応を訴える子どもが見られるようになったのも、当然と言えば当然なのかもしれません。
ただ、いくら時代の変化を嘆いたとて、現状が変わるわけではありません。
子どもを育てる大人は、ちゃんとこうした時代の変化も踏まえて、子どもとの接し方に工夫を加えていくことが大切です。要するに、学校を含めた地域社会がやりにくくなった「問題と向き合う」という関わりを、これまで以上に意識して行っていかねばならないですし、併せて「子どもを支える」ということにも力を注がねばなりません(現実に向き合わせるには、より強い支えが必要だから)。
思いつくことをすべて挙げるわけにはいきませんが、以下では、現代の子育てで大切になりそうなポイントを挙げていきましょう。
イヤイヤ期をどう捉え、関わっていくか
まず大切なのが「イヤイヤ期」における子どもとの関わり方です。
生まれてからしばらくは、子どもは主に親に「環境を変えてもらう」のが自然ですが、1歳を過ぎたあたりから、自分から環境に働きかけることができるまで身体能力が向上します。自ら外界にアプローチをかけていくわけですが、当然、それまでのように都合よく環境は変わってくれません。また、2歳頃になってくると、精神的には「自分の思いと親の思いは違う」ということを意識し始めて自己主張が強くなってきます。言語能力が向上することもあり、自分の思いを積極的に表現し始めるようになります。
こうした身体と精神の発達が合わさることで、自分の思い通りにならない環境に対して「イヤ!」と主張するようになってくるわけです。これが、専門的な言い方をすれば「一次反抗期」であり、一般的には「イヤイヤ期」と呼ばれる時期になります。
この「イヤイヤ期」の関わり方で大切なのは、意外に思われる人もいるかもしれませんが、ちゃんと「子どもにイヤイヤ言わせること」になります。
もちろん、やってあげられることはそれなりにやれば良いのですが、子どもがどんなに「イヤ」と言おうが、やらせてあげられないことはやらせられないし、買ってあげられないものは買ってあげられないのが現実です。そして、子どもはこの現実に触れ、当然「イヤイヤ」となりますが、それを親が「はいはい、よしよし」「仕方ないじゃないのー」などと困りながらも受けとめていくことで、親子の関係性を通して「イヤイヤ」を納めていくことを学ぶのです。こうした学びの積み重ねによって、子どもは「思い通りにならない欲求不満」を納める術を学び、より社会的な場での適応を高めていく力になるのです。他者との共存が前提となる「社会」では、思い通りにならないのが普通ですから、この経験は非常に大切なものと言えます。
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