友達に彫刻刀を突きつけた小3女児が、逆に「いじめられた」と訴え 不登校29万人超の背景に「問題を認められない」親子

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親子間で「不穏な雰囲気」になることが必要

 子どもに限らず、人間には「良いところ」も「悪いところ」もあります。併せて、「良いところも悪いところも含めて、ちゃんと見てほしい」「悪いところがある自分であっても、捨てられないという安心感を得たい」という欲求も存在するのです。

 学校現場では「まるでわざとやってるんじゃないか」と思えるほど問題を繰り返し、親や教員を困らせる子どもがいます。彼らのこころの奥には、もちろん彼ら自身も気づいてはいませんが、「悪いところも含めてちゃんと自分を見てくれよ」という思いがあり、必死になって周囲の大人に訴えかけているように感じられることも少なくありません。

 もちろん、子どもの問題に触れたとしても、素直に子どもが認めるなんてあり得ないことです。絶対に良い顔はしませんし、怒ったり泣いたり否認したり、さまざまな反応を見せ、周囲の大人を手こずらせます。結局は喧嘩別れ、物別れになることだって少なくないし、しばらく親子間で不穏な雰囲気になることだってあるでしょう。

 でも、それで良いのです。そういった「不穏な雰囲気」でどういうやり取りをするかが重要になってきます。それが、子どもが自分の問題を認められるようになるために必要な体験の2つ目です。

 なお、本稿の事例については、(1)本人および親から掲載許可が取れており、本質を失わないことに留意しつつ、個人情報が特定されないように改変を加えたもの、(2)いくつかの類似した事例を組み合わせたものであり、厳密にはフィクションになりますが、実際の事例と遜色のないものになっています。

子どもに「耳が痛いこと」を言う人がいなくなった時代に親がすべきこと 現役スクールカウンセラーが警鐘】へ続く

引用文献・参考文献
Sullivan,H.S.(1953)『Conception of Modern Psychiatry』 中井久夫・山口隆(訳)(1976)『現代精神医学の概念』みすず書房

藪下 遊(やぶした・ゆう)
1982年生まれ。仁愛大学大学院人間学研究科修了。東亜大学大学院総合学術研究科中退。博士(臨床心理学)。仁愛大学人間学部助手、東亜大学大学院人間学研究科准教授等を経て、現在は福井県スクールカウンセラーおよび石川県スクールカウンセラー、各市でのいじめ第三者委員会等を務める。「『叱らない』が子どもを苦しめる」(筑摩書房、高坂康雅氏と共著)を上梓。

デイリー新潮編集部

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