華原朋美が語る「I BELIEVE」と「I’m proud」 「昔の動画を見ると、変わらなきゃという気持ちに…」
挫折を経験し今がある。歌と身体のトレーニングを詰んで成長を続ける日々
次に、第2位の「I BELIEVE」ニュー・バージョンについて尋ねてみると、
「『I BELIEVE』のミュージックビデオでは、オーケストラに囲まれて歌っているのですが、私自身、YouTubeで何度も観てしまうほどインパクトがあるんです。この歌のメッセージ性が、’13年当時、歌手活動を復活するまでのストーリーと、ばっちりリンクしているなと感じています。そのころの事務所社長の“常に歌手として進化しなくてはいけないと”いうお考えや、武部聡志さんの丁寧なプロデュースなど、さまざまな方の想いが詰まっていることが、音楽や映像から伝わったんじゃないでしょうか。歌のトレーニングを始めたのも、この少し前からですね」
一方、「Hate tell a lie」が当時も今も人気だということには、ずっと不思議な感覚を抱いているという。
「コンサート以外の営業先で歌う場合に、この曲だけリクエストされることも多いんですよ(笑)。 人気だから必ずセットリストに組み入れるのですが、これはテンポも速くて早口言葉みたいで、歌うのが大変なんです。でも、いろいろな挫折を経験して、ボイストレーニングも続けているので、デビュー当時よりは成長していると思います。パーソナルトレーニングで体幹を整えて、声も出やすくなりました。当時は何も練習しなかったので、たまに昔の動画を見ると、なんてヘタクソなんだろうって呆れちゃいますが(苦笑)、だからこそ、変わらないといけないという気持ちにさせられます」
ほかにも、喉を酷使してしまった日には、「茅乃舎の野菜だしとあごだし」に豚肉を入れて煮込んだスープを飲むようにするなど、喉のケアもしっかりしているとのこと。確かに、華原のInstagramにアップされたTRFのカバー曲「ENGAGED」での豊潤な歌声を聞くと、デビュー当時の可愛く繊細な声しか覚えがない人は驚くことだろう。
「私にとってTRFさんは大先輩であり、『ENGAGED』が収録されているアルバム『dAnce to positive』は、私の青春なんです。歌詞も前向きで、優しさや愛情たっぷりのバラードなので、いつかステージで歌いたいと思って、昨年のコンサートで歌わせていただきました!」
カバー曲が大人気!「DEPARTURES」は「1回だけでも歌いたい」と志願
こうしたカバー曲の評判は、Spotifyの順位からも読み取れる。なんと第4位から第9位まで、数々のヒット・シングルを押しのけて、’10年代に発表したカバー曲がズラリと並んだのだ。いずれも、さまざまなアーティストにカバーされている有名曲だが、その中でも華原のカバーが選ばれるのは、聴いてみたいと思わせる何かがあるからだろう。
特に興味深いのが、’90年代のTKサウンドの代表曲とも言える「DEPARTURES」や「恋しさと せつなさと 心強さと」の2曲が、それぞれ第4位、第6位と上位入りしていること。実際に聴いてみると、まるで水を得た魚のように楽々と歌いこなしていて、歌詞も素直に伝わってくるようだ。
「『DEPARTURES』は、TKファミリーとして台湾で公演を行ったときに、“1回だけでもいいから”とお願いして歌った曲なので思い出深いです。やはり、この歌はTKサウンドの代表作品だと思ったので、アルバムでもカバーさせてほしいと言いました。『恋しさと せつなさと 心強さと』のほうは、篠原涼子さんが’22年の紅白歌合戦にお出になられたことから、私の名前も思い出して、“華原朋美が歌うとどんなんだろう?”って試しに聞かれた方も多かったんじゃないでしょうか」
華原朋美のカバー曲の数々は、それぞれのオリジナル版を好きな人にも受け入れやすく、だからこそ人気が出たのだろう。テレビでは、喜怒哀楽の表情を包み隠さないリアクションばかりが注目されがちだが、こうして音楽の要素だけでも、彼女の歌の世界が存分に堪能できるし、彼女自身の「歌手・華原朋美を成長させていきたい」という想いも、言葉の端々から読み取れる。
次回、インタビュー第2弾では、カバー曲や’23年末に行われたコンサートツアーへの想いも語ってもらった。
【JUJU、中山美穂、工藤静香……華原朋美が「本当に大変でした」というカバーとは 「いつかヴィジュアル系覆面バンド」という野望】へつづく
(取材・文/人と音楽を繋げたい音楽マーケッター・臼井孝)