華原朋美が語る「I BELIEVE」と「I’m proud」 「昔の動画を見ると、変わらなきゃという気持ちに…」
記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス 華原朋美(1)
この連載では、昭和から平成初期にかけて、たくさんの名曲を生み出したアーティストにインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。
【写真】「たまに昔の動画を見ると、なんてヘタクソなんだろうって(苦笑)」と当時を振り返る華原さん
今回お話を伺ったのは、1990年代後半に“朋ちゃん”の愛称で人気を博し、来年でアーティストとしてのデビューから丸30年を迎える、華原朋美。’90年代には、自身の代表作とも言える「I BELIEVE」「I’m proud」が連続ミリオンヒット、収録した1stアルバム『LOVE BRACE』も累計250万枚のメガヒットに。その後、しばらくの活動休止を経て、’10年代はカバーアルバム『MEMORIES』が2作連続オリコンTOP10入り、さらに’23年末は関東地方5公演のホールツアーを成功させるなど、今なお音楽を中心とした活動を続けている。
そんな華原朋美のSpotifyでの月間リスナーは常時15万人前後と、彼女のアーティスト歴を踏まえると決して少なくない。まずは本人にストリーミングサービスを使っているのか尋ねてみると、
「実は……あえて使っていません。時代の流れもあるので、自身の楽曲がサブスクで解禁されていることは受け入れていますが、アーティストとしては正直、痛い部分もあって(苦笑)。なので、聴きたいと思ったアーティストの方の楽曲は、ダウンロードで買うようにしています。時代とは逆をいっているのですが(笑)」
このような、あえてラクなほうへ流れようとしない姿勢はインタビューを通して随所に見られた。近年のバラエティ番組での“朋ちゃん”像しか知らない人には、ぜひ読んでいただきたい。
「I’m proud」は初めてメロディーを聞いたとき「震えが止まらなかった」
では、Spotifyの再生回数ランキングを見ていこう。TOP3は、「I’m proud」「I BELIEVE」「Hate tell a lie」と、’90年代にミリオンセラーとなったシングル曲が並んだ。ただし、それぞれ最も人気があったのは、「I’m proud」が’05年発売のシングル「涙の続き」のカップリングに収録されたジャジーな演奏と大人びた歌唱がマッチするバージョン、「I BELIEVE」は、’13年のアルバム『DREAM -Self Cover Best-』に収録されたオーケストラ・バージョン、そして「Hate tell a lie」は、アルバム収録曲をメインとした LIVE録音『DREAM~CONCERT 2013~』のパワフルに生まれ変わったバージョン。つまり、いずれも当時大ヒットしたオリジナル音源から進化したものなのだ。
これには、オリジナルの配信が解禁される時期が多少遅れたことや、ニュー・バージョンの音源がストリーミングサービス及び、プレイリストの編成にも力を入れているユニバーサルミュージックからリリースされていることも関係していそうだ。しかし、たとえニュー・バージョンが音楽的に進化していても、「やっぱりオリジナルがいい」と否定的になるファンが多くなってしまうのは、セルフカバーにはよくある傾向だ。にもかかわらず、ニュー・バージョンがこれだけ人気なのは、ファンの思い出を損なわないオリジナルならではの魅力も残しつつ、「より新しいものを聴いてみたい」という期待に応えられるようなアレンジも加わっているからではないだろうか。それぞれの順位について、華原本人に感想を尋ねてみると、
「『I’m proud』は、’96年に発売したオリジナルもとてもカッコいいと思うのですが、’05年版のほうは、それまでの経験を経てから作りあげたもの。だから、これが多く聴かれているということは、当時から変化した“華原朋美”を楽しんで、より共感していただけているのかな、と嬉しくなりました。でも、『I’m proud』は、まずメロディーのみができあがったときに、“なんて素晴らしい曲なんだろう!!”って震えが止まらなかったことを今でも覚えています。それだけ、曲自体が魅力的なんです」
ちなみに、’05年版は原曲よりもキーを下げているのだが、近年、テレビ番組などで本作を披露する際には、またもとの高音キーに戻している。このあたりには、どういった想いがあるのだろうか。
「確かに、キーを下げたバージョンも説得力があってアリだと思いますが、昨年末のコンサートでは、お客さまの思い出を大事にするように心がけたいと思って元のキーに戻し、演奏部分もなるべく当時の音源を使いました。そうしたら、歌のほうも当時より、多少なりとも成長したこともあって、お客さんの心により響いた感触があったんです!」
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