坂本龍一はなぜ「35mmフィルム上映」を熱望したのか 音響監修を務めた“新宿の映画館”がこだわること

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映画文化が盛り上がるきっかけの1つに

――オープンから1年が経ちます。坂本さんが残された映画館の“屋台骨”である音響は、廣野さんがチェックしているそうですね。

 開業期は、上映する作品すべてをエンジニアさんと私の2人で、劇場で観て音を聴き、音量などをこまめにチェックしておりました。我々ができる調整の範囲は限られていますが、常に一番いい環境でお客様に観ていただくことを担保し続けることが重要です。それとは別に、機材の定期的なチェックも実施していきます。またこの映画館を長く続けていくために、開発に携わった人間がいなくなった時にどう繋いでいくかを、今から少しずつ考えていこうと思っているところです。

――坂本さんの「音へのこだわり」を次の世代に伝える映画館には、今後も様々な役割がありそうです。

 坂本さんが携わった作品を継続して上映しながら、次の世代からまた次の世代へ残していくのも我々の使命です。昨年に続き今年も「Ryuichi Sakamoto Premium Collection」と題した特集上映(3月8日から実施中)を企画しました。坂本さんが音楽をご担当された映画や、坂本さんが出演されたライブ作品など、ぜひ坂本さん監修の音響システムでお楽しみいただきたい作品ばかりです。今後はこの特集上映をもっと広げて、他のアーチストのライブ映像や映画作品など、独自の取り組みを増やしていきたいですね。

 もちろん意識しているのは、坂本さんだけではなく映画と音に関するすべてです。深い映画ファンと新しい上映体験を求めている方を、どちらも大切にすることで“二輪”になります。年に1度しか映画館に行かないお客様にもいい環境で観ていただいて、「やっぱり映画館はいいね」と感じていただくことが、映画館業界や映画文化が盛り上がる1つのきっかけになるはずですから。

前編【坂本龍一は「そのままの音をそのまま出す」ことを目指した 音響監修を担当した“新宿の映画館”に遺したもの】からのつづき

デイリー新潮編集部

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