【新宿アルタ営業終了】担当Dが明かす「笑ってる場合ですよ!」制作秘話 大型ビジョンが果たした重要な役割

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「勝ち抜きブス合戦」

 若いディレクターたちの意気込みとは裏腹に、当初の視聴率は低迷した。初回は2%いくかどうか。その後も1%台になる日もあった。横澤プロデューサーは「5%を超えた曜日のチームには1万円。2%を割ったら一人1000円の罰金」を課したこともある。だが、当時は人気絶頂の出演者ばかり。面白さが浸透し、視聴率が上がるのにそう時間はかからなかった。

「平日の昼間にテレビを見るのは圧倒的に奥様が多い――他局はそこを狙った番組でしたが、ウチは若い人、学生、それと水商売の人たちがようやく起きてテレビを見る時間だろうから、その人たちに届くようにと思って作っていました。僕はこの番組で初めて(ビート)たけしさんと仕事をしたんですが、一緒にやったコーナーは忘れられませんね」

 それは「ツービートの勝ち抜きブス合戦」。たけし一流の「美人じゃない女性に光を当てよう」という発想で、我こそはと応募してきた二人の女性を登場させ、どちらが勝つか、トーナメントで判定するというもの。もちろん、今の時代では絶対に放送できないコーナーである。

「このコーナーに応募してきたのが、当時はまだ学生だった山田邦子ちゃん(63)。たけしさんのファンだったので、会いたいという思いもあったようです。それで事前に審査をしたら、例のバスガイドのモノマネとか、いいネタを見せるので“キミが出るのはこのコーナーじゃないよ”と、ネタを披露して視聴者の電話審査で5日間、勝ち続けたらチャンピオンになれるコーナーを勧めたんです。4日目まで勝ち進んだのですが、最終日はドラマの収録があるからといって出なかったんですが、これもいい思い出です」

 また、「アルタから生放送」という“地の利”も利用した。アルタ周辺の映像をCM前などにこまめに流した。

「アルタには名物の大型ビジョンがありました。よく、あのビジョンに見入っている人の顔を抜いていたのですが、ある日、どこかで見た顔だなと思う人がいて。なんと、僕の小学校時代の友達でした。ADに『あの人、すぐに連れてきて!』と言って、CM明けに舞台に上げて…そうしたゲリラ的な演出もよくやりましたよ。アルタ付近の様子を流すのは、『いいとも!』になってからも続いたのですが、アルタに行ってみたいと思う地方の人が増えて、東京に行ったら一度はアルタに行ってみようというムーブメントにもつながりました。そうした意味では、街と一緒になって作った番組でもありましたね。もっとも、今は一般の方を勝手に撮影することはできないので、こうした手法は使えませんが」

「伝える」ことの難しさ

 番組は2年で終わったが、その間に「ひょうきん族」も始まり(81年~)、出演者たちのスケジュール調整も難しくなった。また、観覧希望は先着順だったが、休日と重なる放送日には小学生も列に並ぶこともあった。

「一度、300人ぐらい集まってしまい、警察も出動する事故が起きてしまったんです。その日は無観客で放送しました。でも、先着順でお客さんを集めると、学校が休みの日は、子供が見に来る。演者さんたちには、ちょっとやりにくいなという空気が出ていました。それで、このあたりでいいだろうという思いで番組を終わりにしたんです。アルタ発で番組を当てようとは思いましたが、長くやるつもりはなかったですし。ただ、次の「いいとも!」では、観覧希望は18歳以上で、はがきで応募することになったのです」

 三宅さんは84年に「いいとも!」の後に放送される、午後1時半からの30分番組、「ライオンのいただきます」を手掛ける。「いいとも!」放送終了後、3分間のCMの間にセットチェンジという、慌ただしさだった。

「アルタを中心に、いろいろな人が集まる場所になったのは嬉しかったですね」

 という三宅さんはその後「あっぱれさんま大先生」、「はやく起きた朝は…」「タケちゃんの思わず笑ってしまいました」などの名物番組や、「FNS27時間テレビ」での「タモリ・たけし・さんまBIG3」コーナーの演出などを手掛けた。そして今年、21年ぶりに手掛けるのが、明石家さんま(68)主演のドラマ「心はロンリー 気持ちは『…』FINAL」(4月27日午後9時)だ。「踊る大捜査線」シリーズを手掛けた君塚良一さんが脚本を担当している。

「通算12作目です。今回も随所にギャグを散りばめていますが、さんまさんと話したのは、とにかく分かりやすくやろうということ。どんな番組でもそうですが、面白さがちゃんと視聴者に伝わるように、それを最優先で考えています。自分たちだけで楽しんでいると、視聴者が置いていかれる。それは絶対に避けないといけません」

「笑っている場合ですよ!」から44年。番組作りにかける熱意はいささかも衰えていないようだ。

デイリー新潮編集部

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