もはや“推し活”ではなく“パパ活”…投げ銭に高級シャンパンまで乱れ飛ぶ「ファンビジネス」の実状

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SNSの普及が推し活をエスカレートさせた

 R氏は、推し活のブームで、企業がオタクを食い物にしだしたと嘆く。特に顕著なのは、グッズの粗製濫造だ。特に声優やアイドルのライブでは、会場限定のグッズをこれでもかと販売し、ファンの射幸心を煽る。ファンの間でも、当初はグッズの種類が増えたことを歓迎する動きはあったというが、最近は企業側の姿勢に疑問を抱く人も少なくないという。

「一昔前のライブはファンサービスの一環のようなものだったのですが、今ではもはやライブがメインコンテンツで稼ぎ頭になっている。そのせいか、ライブのグッズなどは『粗利がどれだけ大きいんだよ!』と突っ込みたくなるような、質の低い代物ばかり出す企業もあって、モラルの低下が著しい。企業はオタクを食い物にしすぎだと思いますし、言っちゃ悪いけれど、そんなものに乗せられるオタクもどうかと思います」

 推し活に貢ぐ人が増えた事情は、SNS抜きには語れないとR氏は言う。SNSが普及したことで、「周りの目線ばかり意識しながらオタクをやっている人が増えた。その心理を巧みに利用しているのが推し活ブーム」と言う。「僕からすれば、事実上企業の言いなりになってグッズを買いまくる人は、オタクではなくてただの消費者です」とのことである。

何事ものめり込み過ぎは禁物

 ところで、ある“有名な”新興宗教は「金がかかる」といわれるが、元会員に話を聞いたところ、実際にはそれほど金はかからないらしい。月々の購読料2000円程度の新聞を購読し(最近では購読しない人も増えているようだが)、年末に財務と称して1万円前後を出す(無理に出さなくてもいい)。お金を出す人は出すが、強制力はなく、末端の会員は年間の活動費は5万円もあれば十分であろう。

 推し活はそんな宗教団体の何倍も金がかかることはザラだ。事実、この記事で紹介したAさんは、一回のライブのグッズ代だけで、新興宗教の年間活動費を超える出費をしている。推し活という言葉を隠れ蓑にし、巧みな集金システムができあがっているように思う。

 推し活もほどほどの範囲内でやるのであればまったく問題ないし、日々の暮らしが充実するのは間違いない。筆者も何を隠そう、アニメが好きだし、作中に“推し”はいるのだから。しかし、SNSを見ていると、生活が破綻するレベルで推しに貢いでいる人は少なからずいるようで、気がかりだ。何事ものめり込みすぎには用心したいものである。

山内貴範(やまうち・たかのり)
1985年、秋田県出身。「サライ」「ムー」など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。

デイリー新潮編集部

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