いま全身を「日本製」で揃えてみようと思ったら… 海外生産を推進した元コンビニバイヤーの後悔

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最も入手に困ったのは…

 ちなみに私のある日のアイテムは、下着はグンゼ(京都の宮津工場製)、シャツは鎌倉シャツ、ジーンズは桃太郎ジーンズ(岡山)、スニーカーはコンバースのワンスター(国内メーカーの「ムーンスター」工場製)である。ちなみに、ワンスターは同じ商品が店頭に2種類あるようであれば、値段の高い方が素材にこだわった日本製。そして安い方がインドネシア製。

 最も入手に困ったのは靴下である。ユニクロや無印などSPA(製造小売業)が席巻した靴下は、国内の店頭での販売が見つけられず、ネット通販で購入した。手間をかければ現物を確認してからの購入がよいと思うが、筆者は店舗の多い首都圏在住でも店頭でなかなか買えない状況なので、首都圏住み以外読者の方はネット通販が基本の購買場所となるのだろう。

 日本製は少し値段が高いのが玉に瑕だが、高品質へのこだわりがあるため、筆者の使用した肌感覚だと長持ちし、結果的に節約につながっている気がする。

混迷を極める世界情勢、我々にできることは

 日本は衣料品や食料品にいたる多くを海外産、つまり輸入に頼っている。食料自給率は38%で、先進国のなかでは極端に低い。ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、それにともなう物価上昇はまさにこのような日本の脆弱さを露呈しているのだ。

 日本は地理的にも中国、ロシア、北朝鮮と国際情勢を左右しうる国に囲まれていて、かつ日本の国益の交渉に説得が困難な指導者ばかりだ。彼らの動き次第では輸入品も多大な影響を受ける。このままの構造であれば日本国民の生活が大打撃を受けるのも間違いなく、11月にはアメリカ大統領選を控えており、世界情勢はますます混迷を極めるだろう。

 それを防ぐためにも国内で消費するモノはせめて国内で供給できるような仕組みを少しずつでも作っていかなければならない。それには、政治の力が欠かせないのだが、我々のような市井の人々ができることは、まずは日本製品を意識して買うことだ。

 安全保障上の問題もさることながら、国内でお金を回せば、日本の製造元や従事する方々の所得も上がり、その経済的恩恵は消費者である自分自身にも返ってくることになるのだから。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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