「大谷さんの好感度が低下するリスクも」 危機管理の専門家が警鐘…二つの「危険な要素」を排除するために大谷翔平がやるべきこととは

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危機管理を迷走させるもの

 2度目のMVPを受賞した時の全米野球記者協会の夕食会で、大谷選手が水原氏への感謝の言葉を述べたのは有名な話だ。だが、愛とか恩義という情は時として、危機管理を迷走させてしまうことがある。ジャニー喜多川氏の性加害について、多くの古参タレントが口をつぐんできたこと。あるいは、離婚した元夫婦が愛憎から暴露合戦を行うことが証拠である。すなわち、優しさに偏ったり、厳しさに偏ったりしてしまうのだ。

 それを防ぐために、大谷選手には“罪を憎んで人を憎まず”の精神で、“今は厳しく後に優しく”あるいは“水原氏本人には厳しく家族には優しく”、という危機管理を期待している。

ギャンブル依存で横領した犯人の言い分

 最後に、読者の皆さんが抱いているであろう疑問にお答えし、他山の石にしていただくためにお伝えしたいことがある。なぜ水原氏はあんなに巨額の借金を作ってしまったのかという点についてだ。

 私はギャンブル依存の社員が会社のお金を横領した事案の相談を数多く受けてきた。不思議なことに、その犯人の大半には悪意がなく、「一時的な立て替えをしただけ」という認識だった。なぜなら、彼らは「次に10倍のお金を賭ければ簡単に取り戻して返せる」という錯覚に陥っているからだ。

 100万円の株式投資をして20万円(20%)損をした時、次に1000万円投資したら2%の値上がりで取り戻せると考えて深みにはまっていくのだ。

 貴方は次のようにささやかれたら、どう反論しますか?「丁半博打やルーレットなど、奇数か偶数かを当てる博打は負ける筈がない。1回目に負けたら、2回目は同じ方に倍の金額を賭ける。2回目も負けたら、3回目は更に倍の金額を賭ける。それを繰り返せば、いつか絶対に勝つのだから。永遠に奇数だけとか偶数だけが続くことはない。あればイカサマだと分かる」と。

 これがギャンブルの怖さである。自分自身はもちろん、大切な家族についても、なるべくギャンブルからは遠ざけていただきたいと願わずにはいられない。

関連記事「『1時間30万円の高額報酬』 大谷翔平の弁護士は『アンドリュー王子』も担当した“最強の守護神”」では、“最強の守護神”と呼ばれる大谷の弁護士について詳しく報じている。

田中辰巳(たなかたつみ)
(株)リスク・ヘッジ取締役、危機管理コンサルタント。1953年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。リクルート社で広報課長、業務部部長などを歴任し、97年に危機管理のコンサルタント業務を手がける(株)リスク・ヘッジを設立。

週刊新潮 2024年4月4日号掲載

特集「違法賭博の深淵 二つの危険な要素とは  リスク管理の専門家が提言 『大谷』がイメージ回復のため為すべき『二刀流危機管理』」より

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