「本人確認不要で50万ドル一括送金も可能です」 水原一平氏の違法賭博問題、残された“最大の謎”、具体的なシステムを解説

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問題は誰が送金したのか

 3月25日(現地時間)の「会見」を経てもなお、大谷翔平(29)に対する米メディアの論調は日本よりも手厳しい。それは、質疑応答を避けたことで“肝心の点”、つまり送金手法などが明かされなかったからに他ならない。そのため、「大谷本人が全く知らないまま送金なんかできるのか」といった疑念を口にする向きも日米両国にあるのだが、実際にはさほどトリッキーな手段を取らなくても大金を送ることができるのだ、と専門家らは指摘する。その具体的なやり方とは――。

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 水原氏の“うそ”をインタビューとともに報じたのは、スポーツ専門局「ESPN」だった。在米ジャーナリストが言う。

「担当したティシャ・トンプソン記者はその後、米ストリーミングサービスの番組に出演、取材の内幕を明かしています。それによれば、大谷の名義で賭博業者のマシュー・ボウヤー氏側に電子送金があった事実を今年1月には把握していたとのことで、そのつづりはユニフォームに記されている『OHTANI』ではなくHが抜けた『OTANI』だったといいます」

 大谷が日頃、そのスペルを使用しているのか、実際に同記者は調べたといい、

「結果、パスポートや運転免許証などで本人が法的に用いているスペルであるとの裏付けが取れたというわけです」(同)

 番組の司会者から「(送金の)信憑性が高まりますね」と水を向けられた同記者は、

〈問題なのは誰がそれを送金したかということです〉

 そう口にした。捜査に差し障る恐れがあったとはいえ、こうした点をクリアにしないまま一方的な「声明発表」に終始した大谷に、米メディアは疑念を募らせているのだ。

いかなる方法で送金されたのか

 水原氏が送金した可能性について、カリフォルニア州弁護士の資格を有する東町法律事務所の村尾卓哉弁護士に聞くと、

「第三者による電子送金は、『Power of Attorney』(POA)という方法で可能です」

 とのことで、

「これは“口座から送金する権限をこの人に委ねます”という委任状を銀行に提出し、当該人物に送金権限を付与する仕組みです。委任状には通常、口座名義人と公証人がサインをし、委任する内容は自由にカスタマイズできます。例えば毎月の送金額上限を50万ドル、あるいはもっと多く設定することもできます」

 このPOAは一般的に、寝たきりの高齢者や認知症患者が家族に資産管理を任せる際などに用いられる制度だというのだが、

「特定の口座について、特に制限をせず大谷選手が水原氏に権限を付与していたとしても不思議ではありません」(同)

 続けて、

「もう一つは、複数の人物が共同で署名(サイン)の権限を持つ『サイナー』というシステム。おもに法人口座などで用いられ、口座開設時に社長と財務責任者をサイナーに指定し、口座運用において署名権限を持たせるケースなどが考えられます。POAは、数多くある口座の運用行為のうち、日常的な振込や送金など委任状に記載のある行為にのみ権限を付与するものですが、サイナーには基本的に広い権限が与えられます」(同)

 さらに先のジャーナリストが付言して、

「日本の銀行の『振込代理権』にあたる『Check writing privileges』という、口座名義人の許可を得た人物が送金できるシステムもある。オンライン上では、本人確認不要で一度に最大50万ドルを送金できます」

「よく言えたものだとあきれる」

 いずれも銀行とのやり取りが必要で、英語が堪能でなく野球に専念したい大谷が、細かな支払いなどを水原氏に任せていたとすれば合点がいく。もっとも、松井秀喜氏の広報担当としてメジャー4球団を渡り歩いた広岡勲・江戸川大学副学長は、こう断じるのだ。

「契約金7億ドルのスーパースターの傍にギャンブル狂を据えたら、闇社会のいいカモになるのは言わずもがな。1989年のピート・ローズ事件以降、メジャーは賭博に関してより厳しくなり、春キャンプ中は丸1日を研修に費やすなどしてきました。にもかかわらず水原氏は『州で違法だと知らなかった』とシラを切っている。よく言えたものだとあきれてしまいます」

 4月4日発売の「週刊新潮」では、水原氏の知られざる半生や、捜査の行方などについて7ページにわたって特集している。

週刊新潮 2024年4月11日号掲載

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