最後は盛り上がりに欠けた「ブギウギ」 民放Pが指摘する“足りなかったこと”
脚本家の姿勢
「ただし、足立氏は民放での経験がほとんどありません。民放でも活躍しつつ朝ドラも書いた脚本家たち、例えば、『半分、青い。』(18年前期)の北川悦吏子氏、『ふたりっ子』(96後期)や『オードリー』(00年後期)の大石静氏、『花子とアン』(14年前期)の中園ミホ氏のようなハッタリやあざとさ、何が何でも数字を取りに行くという姿勢が欠けていたように思います」
どうすればよかったのだろう。
「例えば、吉柳咲良(19)が演じた新人歌手・水城アユミは美空ひばり(1937~1989)をモデルにしていることは明らかですが、もっと本物に寄せてほしかったですね」
デイリー新潮は3月30日に配信した「【ブギウギ】最終週の直前に登場した19歳『新星女優』は高畑充希と同じ道を歩む」で、吉柳の歌唱力について報じた。
「3月22日に放送した『オールスター男女歌合戦』のステージは見事でしたが、笠置とひばりは『紅白歌合戦』での共演はありませんでした。だったら、“ベビー笠置”の異名もあったひばりですから、笠置の『東京ブギウギ』はもちろん、デビュー曲の『河童ブギウギ』や『悲しき口笛』なども本人になりきって歌わせればもっと盛り上がったでしょう」
朝ドラはドキュメンタリーではないのだ。
もっと歌を
「草なぎ剛(49)が演じた羽鳥善一のモデル・服部良一(1907~1993)との確執を、もっとドラマチックにすることもできたと思います。笠置のアメリカ公演で二人の対立が最高潮に達しますが、それもありませんでした。また、この公演の手伝いをしたのが、後のジャニー喜多川氏(1931~2019)です。ジャニーズ問題と『ブギウギ』の放送開始の時期が重なり、SNSでもジャニー氏はいつ登場するのかが話題になっていましたが、それもなかった。もちろん、制作サイドが脚本家に触れないよう要請したかもしれませんが、それっぽい人物を登場させるだけでも話題になったでしょう。また、『ブギウギ』でスズ子の初代マネージャーを務めた山下(近藤芳正=62)は甥にマネージャー業を譲る形で円満に引退しましたが、そのモデルとなった実際のマネージャーは、実は笠置の貯金に手を出して賭け麻雀とヒロポンで身を持ち崩し、クビになった人物でした」
最終回、山下マネージャーはラストコンサートの楽屋を訪れ、涙の再会を果たしたが、実話のほうがドラマチックだ。
「なんだか、みんないい人に描きすぎたのではないか。また、ここからというところで、内縁の夫・村山愛助(水上恒司=24)との愛と死、その忘れ形見である娘・愛子との生活を丁寧に描きすぎたようにも思えます。終盤はお手伝いさん(木野花=76)や娘とのシーンばかりでしたが、視聴者が見たいのはそこではありませんでした。もっと歌が聴きたいという人が多かったのではないでしょうか」
服部良一と同時代を生きた作曲家・古関裕而(1909~1989)をモデルにした20年前期の「エール」では、彼の曲がよく使われていた。
「今のところ平均視聴率で20%超を達成した最後の朝ドラが『エール』です。服部良一の作品には『青い山脈』や『銀座カンカン娘』だってある。最終回のコンサートでスズ子の歌声を堪能して、ようやく溜飲を下げたという視聴者は少なくなかったかもしれません」