「ユリ・ゲラー」初来日から50年 今なら間違いなく炎上する“スプーン曲げの超能力ブーム”はなぜ起きたか

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超能力者はいる

「曲がらなかった。もし曲がっていたら、超能力の研究もしていたかもしれません。僕は信じる力が足らなかったのかもしれない。物事を疑ってかかってしまうから」

 JSPS会長なのに?

「もちろんUFOを見たという人の話も客観性を持って聞きます。ただね、超能力というものを信じていないわけではないんです。ユリ・ゲラーのショーでも実際に一般の人が曲げるのを見たし、テレビを見て曲がったという人が僕の周りにも何人もいました。人間って、火事場の馬鹿力じゃないけれど、自分が思っている以上の思わぬ力を出す時があるじゃないですか。念じる力というものもあるかもしれません」

 来日前のユリ・ゲラーは、超能力者として有名だったのだろうか。

「少年漫画誌などでは、以前から特集されていたと思います。ただ、それほど話題になっていたわけではありません。世界的に見ても、そうだったのではないでしょうか。当時、日テレのディレクターだった矢追純一さんが、たまたま見つけたと聞いています。それほど当時のテレビの力は大きかったんです。ユリ・ゲラー人気は最初に日本で火がついたと言っていいでしょう」

 ユリ・ゲラーの登場後、日本には何人もの超能力少年が現れ、テレビで引っ張りだこになった。

「有名な清田(益章)くんもそうでした。後にスプーンを力で曲げているところを撮影されてインチキ呼ばわりされてしまいましたが、そうした能力っていつでも出せるものではないと思うんですよ。念力という精神的なものでもあるから、撮影が入ると能力を出せないことだってあると思います。実際、僕が立ち上げから関わったオカルト情報誌『ムー』(ワン・パブリッシング)の編集部が、清田くんに実験をお願いしたことがありました。合羽橋(東京・台東区)の道具街で、人の手では絶対に曲げることができない頑丈なスプーンを買ってきて渡すと、彼はグニャグニャに曲げてしまい、編集部一同が彼の“信者”になったこともある。ですから、本当の超能力の持ち主はいると思っています」

 ユリ・ゲラーは本物の超能力者なのだろうか。

謎とロマン

「それは何とも言えません。2017年にCIA(米国中央情報局)が公開した資料の中には、ユリ・ゲラーのテレパス能力を試した実験結果も入っていましたから、普通の人とは違う何らかの能力を持っているのでしょう。超能力で油田を見つけて悠々自適の生活とも聞きますし」

 06年には彼が大ファンというエルヴィス・プレスリーの旧宅を90万5100ドル(当時の約1億円)で落札したとの報道もあった。お金に不自由はしていないようだ。

「その一方で、英国のビッグ・ベンを大晦日に止めてみせると発表したものの止められなかったこともある。また、任天堂のポケットモンスターのキャラクター『ユンゲラー』は明らかに自分をイメージしたキャラで、ストーリー上、悪役であることでイメージが傷つけられたと、6000万ポンド(当時の101億円)の賠償を求めて任天堂を訴えると宣言したこともありました。余計なことをしてはダメなんでしょうね」

 後に彼は任天堂の一件について、自身の公式X(当時のTwitter)で「20年前のことを本当に後悔しています」と反省している。

 ともあれ、彼が超能力というブームを巻き起こしたことには間違いはない。なぜそれほど盛り上がったのか。

「今なら考えられませんよね。番組の放送中にSNSで炎上してしまうかもしれません。当時は、70年安保も失敗に終わって、学生運動の夢も潰えた時代でした。73年にオカルト映画『エクソシスト』がアメリカで公開されて大ヒットし、この年に出版された五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』がベストセラーになったことで、オカルトブームに下地ができた。ちなみにJSPSが設立されたのもこの年です。そこに超能力やUFO、ネッシーをはじめとする未確認動物(UMA)といった、いるのかないのかわからないけど完全には否定しきれないという点に感じる謎とロマンが新鮮に映ったのかもしれません」

 あれから50年、またオカルトブームが生まれることはあるのだろうか。

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