【追悼】「ジョン・レノンもほれた才能」 エリック・カルメンさんの色あせないメロディー

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 アメリカのシンガー・ソングライター、エリック・カルメンさんの名前に覚えがなくても、歌声はどこかで耳にしているだろう。

 1975年、「オール・バイ・マイセルフ」が世界的に大ヒット。今もバラードの名曲として親しまれている。エリックさんの歌声は繊細で友人に語りかけているような優しさがあった。本当にひとりぼっち、ひとりでは生きていけないんだ、という歌詞の感傷的な雰囲気は、英語を知らずとも心にするりと入ってくる。トヨタなどのテレビコマーシャルでたびたび使われたのも納得である。

 ラジオDJで音楽評論家の山本さゆりさんは言う。

「全盛期は80年代の半ばまででしょうか。貴公子と呼ばれ日本でもアイドル的な人気でした。メロディーが美しく、クラシックをベースにポップミュージックを融合する興味深い試みをしていました」

 ロシアの著名な作曲家セルゲイ・ラフマニノフの影響を大きく受けていると公言していた。

「日本でもはやった『恋にノータッチ』もラフマニノフ色が強い。クラシックにある美しいメロディーを自分の曲の中に織り込み、ふだんクラシックを聴かない人にも良さを伝えたいとの思いがエリックさんの原動力でした」(山本さん)

ジョン・レノンもファンだった「ラズベリーズ」

 49年、オハイオ州クリーブランド生まれ。幼い頃からピアノやクラシック音楽を学んでいたが、ビートルズに衝撃を受ける。大学時代に組んだバンドが「ラズベリーズ」に発展、72年にデビュー。エリックさんが中心メンバーで同年にヒットした「ゴー・オール・ザ・ウェイ」を作詞作曲した。

 音楽評論家の増渕英紀さんは言う。

「ラズベリーズはパワーポップの元祖と呼ばれていて、ソロよりこの時代のエリックの方がいいと思うぐらいです。メロディーもハーモニーも美しい。アメリカにいながらビートルズの流れをくんでいます」

 当のジョン・レノンもラズベリーズのファンだったというのに、75年に解散。ソロ活動に転じて早々に人気を呼んだのが、「オール・バイ・マイセルフ」だ。

 音楽評論家の湯川れい子さんは思い出す。

「ラジオ番組『全米トップ40』で紹介しました。すぐに日本でも反応がありました。70年代の名曲です」

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