共演者探しがより難化…「STARTO社」本格始動でドラマ界の勢力地図はどう変わるか

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福田社長の評判

 スタート社勢のドラマの減少が見込まれる第2の理由は、共演者探しがこれまでより難化すると予測されていること。福田淳社長の言動に端を発している。ほかの芸能事務所を辛辣に批判しているため、かなり反感を買っている。

 言うまでもなくスタート社には女優がいない。ドラマは女優がいないとつくれない。男性の俳優の共演者も不可欠。福田氏がほかの芸能事務所と対話する姿勢を見せないと、スタート社勢のドラマ界での立場は厳しいものになる。多数の女優を擁する芸能事務所からも反発の声は上がっている。

 福田氏はまだ1度として記者会見を開いていないが、昨年12月9日に新聞・通信社、テレビ局の記者のみ集め、取材に応じ、こう語った。

「日本の芸能事務所は、口利きでやってきた古い業界」(同12月10日、朝日新聞デジタル)

「日本の芸能事務所は次につながるビジネスモデルが弱い」(同12月9日、読売新聞オンライン)

 ほかの芸能事務所に対する辛辣な批判が相次いだ。こうも口にした。

「本来タレントに選択の自由、移籍の自由があるべきなんです」(同)

 これらの福田氏の発言に既存の芸能事務所関係者が不快感をあらわにするのは、

「タレントの結婚の自由にまで介入し、同時にタレントの移籍を阻んできた最右翼は旧ジャニーズ事務所。その会社の事業を引継ぎながら、負の歴史には触れず、他社の批判ばかりするのでは道理が通らない」(大手芸能事務所幹部)

なぜ記者会見を開かないのか

 福田氏の姿勢そのものを疑問視する声も強い。

「福田氏は批判するばかりで、具体的な改革プランもロードマップも示さない。よその芸能事務所との話し合いもしない。ソニー・グループ(ソニー・デジタルエンタテインメント・サービス社長)にいたことを強調するが、芸能界の現場経験はないに等しく、スターを育てたこともない。もう少し謙虚になってもいいのではないか」(別の大手芸能事務所幹部)

 ドラマの主題歌についての姿勢もほかの芸能事務所から「古い」と指摘されている。たとえば、春から関西テレビ制作で、フジ系で放送される深夜ドラマ「お迎え渋谷くん」はSixTONESの京本大我(29)が主演し、主題歌は同グループの「音色」に決まっている。

 旧ジャニーズ事務所は所属タレントが出演するドラマの主題歌を自社のタレントの楽曲にするよう強硬に主張した。「ゴリ押し」とすら言われた。ドラマと楽曲のマッチングより自社の利益や面子を重んじたわけで、古いと言わざるを得なかった。「お迎え渋谷くん」の「音色」はフラットな状況下でドラマに最適な楽曲が選定されたのだろうか。

 福田氏の言動で最も「古い」のは記者会見を開かないことではないか。それでいてラジオや動画には出る。記者を選別しているわけで、厳しい質問を嫌がっていると見られても仕方がない。福田氏は米国のエンタテインメント界の話をよく引き合いに出すが、米国の常識では考えにくい。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。放送批評懇談会出版編集委員。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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