ソフトバンク、3年間で「122億円超」大型補強もコスパがあまりに悪い…他球団関係者は「いくら待遇が良くても……」
パ・リーグ盟主の座を明け渡した「常勝軍団」
2011年から10年間で7度の日本一に輝いたソフトバンク。この結果に孫正義オーナーが掲げる『世界一のチーム』というビジョンの実現も大袈裟ではないと感じていたファンも多かったのではないだろうか。それが一転、2021年に8年ぶりのBクラスに転落すると、その後も3年連続で優勝を逃し、パ・リーグの盟主の座をオリックスに明け渡してしまった。【西尾典文/野球ライター】
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しかし、この3年間もソフトバンクはチーム強化の手を緩めていたわけではない。むしろそれまでを上回る大型補強を敢行していたのだ。この間に獲得した主な選手と契約内容をまとめると、以下のようになっている(金額は推定)。
<2020年オフ>
レイ(前カブス):年俸1億円
マルティネス(前・日本ハム):年俸1億円
<2021年オフ>
又吉克樹(中日からFA):4年総額6億5000万円
チャトウッド(前・ジャイアンツ):年俸3億5000万円
レイ(前・ブルワーズ):年俸1億円
※前出のレイと同一人物。2020年8月にソフトバンクを退団しており再獲得
ガルビス(前・フィリーズ):2年総額8億4000万円
<2022年オフ>
有原航平(前・レンジャーズ):3年総額15億円
近藤健介(日本ハムからFA):7年総額50億円
嶺井博希(DeNAからFA):4年総額3億円
ガンケル(前・阪神):年俸1億6000万円
オスナ(前・ロッテ):年俸6億5000万円
アストゥディーヨ(前・マーリンズ):年俸1億8000万円
ホーキンス(前・アメリカ独立リーグ):年俸6600万円
デスパイネ(前・キューバ国内リーグ):年俸1億8000万円
※2023年6月に入団
<2023年オフ>
山川穂高(西武からFA):4年総額20億円
ウォーカー(巨人からトレード):年俸1億円
単純計算すると、3年間の総額は「122億7600万円」という、とんでもない規模に達した。このオフは、比較的動きが静かだったが、前年に獲得したオスナと4年総額40億円で再契約を結び、一時はDeNAを退団したバウアーの獲得にも動いているという報道も出るなど、積極的に補強に動いていた。
“ハード面”への投資も他球団を圧倒
ただ、改めて獲得した選手の顔ぶれを見ても、期待通りの働きを見せたのは有原、近藤、オスナの3人くらいである。また一覧には名前はないが、2019年オフにはバレンティンを2年総額10億円で獲得しているが、2年間でわずか13本塁打という結果を残して退団している。莫大な金額に対する費用対効果という意味では極めて良くないと言わざるを得ない状況だ。
ソフトバンクのかけている大きなコストは選手獲得に関するものだけではない。練習施設などの“ハード面”への投資も他球団を大きく上回っていると言われているのだ。
2016年には筑後市に「HAWKSベースボールパーク筑後」を建設した。その総工費は約50億円とも言われている。さらに、昨年から四軍制を導入したことによって抱える育成選手が増え、9月には選手寮である「若鷹寮」も増築された。ファームの施設は試合も行われるが、一軍の試合とは違ってそこまで収益が上がるものではない。施設が増えればそれだけ維持するためのコストも増えることになる。また選手が増えればそれに比例してスタッフの数も増え、人件費なども増えている。
そしてもうひとつの大きな問題がこのファームへの投資も、今のところ大きな“リターン”を生んでいないという点にある。
2010年の育成ドラフトで獲得した千賀滉大(現・メッツ)、牧原大成、甲斐拓也の3人が活躍したことが大きく取り上げられるが、それ以降に一軍の戦力に定着した育成ドラフト出身の選手は石川柊太(2013年育成ドラフト1位)、周東佑京(2017年同2位)、大関友久(2019年同2位)しかいない。2011年から2020年までの10年間に育成ドラフトで獲得した選手は合計で59人になる。つまり、その9割以上が戦力になっていないという計算になるのだ。
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