高齢者は8時間以上寝ると寿命が縮む? 世代ごとに違う「睡眠時間と死亡リスク」
高齢者は6時間寝ていれば大丈夫
健康長寿のために必要な睡眠の量については、これまで膨大な数の調査がなされ、成人の睡眠時間は7~8時間程度を基本として、それより短くても、長くても死亡リスクが高まるとされてきました。しかし、私たち国立精神・神経医療研究センターの研究グループが40歳以上の米国地域住民約6500人の睡眠データを追跡した結果、65歳以上の場合、睡眠時間が短くても死亡リスクが高まらないことが判明したのです。
睡眠時間は個人差が大きく、60代で8時間近く寝ている方もおられますが、平均すると6時間を下回り、かつ睡眠時間と死亡リスクの関係は極めて薄い。高齢者の場合、6時間程度眠れていれば、悩むことはないのです。
私たちの調査でも、40~64歳の現役世代の場合、睡眠時間が短い人ではやはり死亡率がアップしていました。従って睡眠時間が短くても死亡率が高まらないという高齢者の傾向は特異であり、「十分な量を確保しなければならない」という「睡眠の常識」は、加齢とともに通用しなくなることが明らかになったのです。
布団に長く居続けることがリスクに
この調査では、もう一つ重要なことが分かっています。それは、高齢者の場合、布団で過ごす「床上時間」が長いほど、死亡リスクが増すということです。一方、現役世代の場合、睡眠時間が長いことは死亡リスクを下げることが新たに判明しました。つまり「寝過ぎ」によって死亡率が高まるのも、高齢者特有の問題といえるのです。
この調査結果は、「睡眠時間」ではなく、「床上時間」が長い場合であるというのがポイントです。従来の調査では、「どれだけ寝ていますか?」という主観評価に頼った質問で睡眠時間を判断していたため、「睡眠時間」と「床上時間」を混同していた可能性がありました。今回、それを分けて評価した結果、「寝よう、寝よう」と布団に長く居続けることが高齢者の死亡リスクにつながることが分かったのです。
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