北朝鮮による日本人拉致、地震、皇室…新潟県警警備部の知られざる実像とは
「4月から被災者を支援する日赤で勤務される愛子さまは、能登半島地震発生以降、ずっと被災地へ心を寄せて下さっているとお聞きしています。天皇ご一家が石川だけでなく、新潟など被災全3県に目配りいただいていることに感謝しております」
天皇陛下の護衛でも実績のある、新潟県警警備部OBはこう語る。新潟は大事件が少なく、花形と呼ばれる刑事警察の分野では、地味な印象を受ける。だが、警備・公安警察においては全国屈指の実力を誇る県警だ。皇后陛下ともゆかりがあり、警衛(皇室警備)や地震対応など、警戒警備活動の多方面で人知れず底力をみせる地方警察のトップランナーを紹介する。
52年ぶりの有罪判決
警備・公安警察は、「公安」という言葉に負のイメージがあるためか、警察組織内では単に「警備警察」と呼ばれる。
このうち警備部門は「警備実施」と称され、新潟では警備2課と同課が運用する機動隊が担当。公安部門は「公安捜査」と呼ばれ、警備1課と外事課の任務になる。警備1課は極左の思想事件、外事課は拉致事件を担う。
警察庁長官は省庁の次官級で「警視総監は準次官相当です」と警察重鎮は語る。総監は47都道府県警本部長の1人だが、首都防衛を担うトップの伝統から、他の警察本部長より遥かに格上となる。「 長官が社長なら、警視総監は東京支店長でなく、副社長兼東京支社長です。どちらかに就くと警察では『上り詰めた』と言います」(同)。警察庁では官房長(旧警務局長)、刑事局長、警備局長、交通局長、生活安全局長、サイバー警察局長が首脳だが、「上り詰め」られるのは、人事や会計を握る警務畑、刑事畑、警備畑の3ルートだ。
警備実施の分野では、サミットなどで実績豊富な警視庁。東京以外で初サミット開催地となった沖縄県警。阪神大震災の被災地であり、万博初開催地でもある大阪府警。愛・地球博の愛知県警がその手腕が評価されている。一方の公安捜査は、警備部から唯一独立した公安部がある警視庁。日本赤軍の重信房子元最高幹部を電撃逮捕した大阪府警。尖閣諸島へ強硬上陸した中国人を逮捕した沖縄県警の評価が高い。だが、新潟県警も負けてはいない。
新潟の場合、警備実施には専従の機動隊のほか関東管区機動隊の新潟部隊がおり、署などで勤務しつつ機動隊に準じた訓練を受け、応援要請があれば関東管区警察局長が他県警の部隊と組み合わせて県外に派遣している。公安捜査では、警備1課が日本人を捜査し、外事課が拉致犯ら外国人を捜査している。
反米や反天皇制を掲げた中核派など極左が71年11月に起こした渋谷暴動事件で、応援派遣された関東管区機動隊・新潟中央小隊の中村恒雄警部補を殺害し、指名手配された中核派の大坂正明被告が2017年5月、長い逃亡生活の末に逮捕された。
52年の時を経て、昨年12月に有罪判決が出たが「中村さんの殉職は、我々にとって永遠の十字架です」と、県警警備部関係者は言う。
では、警備警察における新潟県警の“強み”を具体的に検証してみよう。
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