4月から「医師の働き方改革」が始まっても“隠れ残業”はなくならない…現役医師が指摘する「抜け穴」

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“薄利多売”と“厚利小売”

 一方、こんな指摘も。

「本来は、ただ労働時間を減らそうという話ではなく、『適正な労働時間に抑えたら、どれくらい医療サービスが縮小されてしまうのか』を先に考えた上で、その縮小幅をどうやって抑えるのかという議論をしていくべきだと思うんです。『これまでの半分くらいの医療しか提供できなくなってしまう』ということであれば、『ではその50%をどうやって20%に抑えようか』という話です。状態が安定している患者さんの定期フォローは1か月ごとから2、3か月ごとにするとか、業務によっては外部に委託するとか、現実的な方法が見えてくるはずです」

 すると病院の収支にも関わってきそうだが、

「差額ベッド代(個室に入院した際の追加費用等)を値上げしたり、医療材料費のコスト削減を図ったりする必要も出てくるでしょう。あるいは、大きな病院に負担が集中してしまっている意味でも、診療所やクリニックは多くの患者を受け入れるほど収益が増える“薄利多売”の設計にした上で、大病院は提供できる医療の高度さや専門性を、“厚利小売”の形で活かすような構造に棲み分けていく。こうした“役割分担”ができれば、適切な医療を適切な料金で提供することに繋がり、また勤務医に偏った労働時間も、業界としてバランスがとれていくことにも繋がるのではないでしょうか」

 そしてこうも言う。

「神戸の過労自殺のような事件は、絶対に繰り返してはならない。その思いは、どの医療従事者も持っているはずです。適切な休養を得ることができれば、生産性だって向上し、現場に良いアイデアだってもたらされるでしょう。医師の自己犠牲で成り立つ現状を変えるためにも、制度の抜け穴を探すのではなく、社会全体として医師の働き方改革に本気で向き合っていく必要があると思っています」

デイリー新潮編集部

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