メジャー挑戦5年目「筒香」が退団…それでもネット上は“応援”コメントばかりなのはナゼか

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年棒数億円で

 だからこそ、筒香も「野球とBaseballは違う。私が活躍できるのは野球である」と考えてもいいのではなかろうか。もちろん、本人の挑戦する気持ちを一番尊重すべきだが、外野が筒香のことを過度に礼賛し過ぎている現状がある。通常ネット空間は期待された成績を残せないアスリートに対して手厳しく、罵詈雑言の嵐になりがちなのだが、筒香に関しては優しいのだ。筒香関連のYahoo!ニュースのコメントには以下のようなものがある。

〈お願いします!アメリカでやれるだけやってほしい。終わったっていい。挑戦する姿勢、子供たちに見せてほしいです。筒香さんは今、凄い役目を担ってます。日本に帰ってやる姿、私は我慢します。〉

〈一生遊んで暮らせるだけの金は稼いだろうに、それでも野球に挑戦し続ける姿勢は感銘する〉

 日本では抜群の成績を出したがアメリカではパッとしなかった選手では広島の秋山翔吾がいる。多分秋山も向いていなかったのだ。だからこそ2年で日本に戻ってきた。しかも、ひとたびメジャーを経験すると「メジャー補正」とでも言えるだろう、年俸数億円で契約してもらえることが慣例になっているのである。

賞賛の声が窮地に追い込むことも

 本来他球団を戦力外になった選手であれば、3000万円でも御の字なのだが、メジャーに行った場合は数億円が当たり前になる。筒香も2021年、その年3球団目のパイレーツで後半に当たりまくり、打率.268、8本の本塁打を打った直後に日本球界復帰をしていれば良かったのにな、と他人事ながら思ってしまう。

 ここには「出戻りは恥」という概念がある。本来人生というものはいくら失敗してもその後挽回すればいいのだが、日本球界に戻れば負けを認めることになる、といった考えを筒香が持っているのであればその必要はない。なぜならあなたは日本のトップ0.0001%の野球エリートなのだから。そこに誇りを持っていけばいいのでは、と凡人である私は思ってしまう。

 挑戦する姿勢を見せる人物に称賛の声を送るのはいいのだが、そうした声が却ってその人物を窮地に追い込むこともあるものだ、とも思えた筒香に関するネット世論である。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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