慶応高が参加する新たなリーグ戦も…一発勝負の甲子園大会は高校野球の可能性を引き出せているのか

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「二極化」による危機

 野球の競技者数は近年、減少の一途をたどっている。日本高野連の統計によると、高校野球の部員数は2014年の17万312人をピークに、昨年は12万8357人まで落ち込んだ。トーナメント制という大会方式に加え、野球人口の激減もプレー機会の偏りに拍車をかけているというのだから驚きだ。

 一見すると、人数が減れば試合に出られる選手の割合が増えそうだが、なぜマイナスに作用するのだろうか。

 実は近年、高校野球では一部の強豪校とそれ以外のチームの格差が広がる「二極化」が進んでいると指摘されている。

 夏の大会での部員不足による連合チームが、2013年の32チームから昨年は128チームまで増えているように、全体的な人数の減少によりチームの維持が困難になる学校が増える一方で、一部の有力校には依然として多くの選手が集まっているという構図が存在している。

「それほど強豪校ではなくても、努力次第で格上の高校とも渡り合うことができるという環境は失われつつあると言えます。他校と合同しなければ大会に出られないような状況では充実した活動は難しいですから、熱意を持って野球をやりたい選手は、厳しい競争を覚悟で名門校に飛び込まざるを得ない。必然的に、そういった学校は多くの控え部員を抱え続けることになります。才能を埋もれさせてしまいかねない環境は変わりません」

岐路に立つ高校野球

 今後は少子化がますます進行し、存続の危機に立たされる野球部は増え続けるのは確実だ。その中でいかに選手が育っていく環境を整えるかという視点に立つと、学校単位の部活動を基本単位とした高校野球の在り方は岐路に立たされていると言える。

「選手の成長を考えるなら、リーグ戦の要素を取り入れることはもちろん、人数が多い学校は複数のチームを編成して出場できる仕組みがあってもいいですし、これだけ連合チームが増えているのですから、学校の枠にとらわれないクラブチームの参加が認められてもいい。そのように柔軟に受け皿を用意することで、より多くの選手のニーズに応えることができますし、競技人口の減少にも多少は歯止めをかけられるのではないでしょうか。ただ、従来の高校野球のスタイルを大きく変えることには抵抗を感じる人も多いでしょうから、簡単な道ではありません」

 全国の球児が学校の名誉と地域の期待を背負い、一発勝負のトーナメントを勝ち抜いて甲子園で全国制覇を目指すという高校野球の枠組みは、長い間日本の野球ファンを引き付けてきた。しかし、その陰で素質を開花させることができず淘汰されていった選手が数多くいたのも間違いない。

 競技人口が先細りしていく中、いかにして高校野球というイベントとしての魅力と育成環境の充実のバランスを取り、持続可能なシステムをつくっていくか。

 難しい舵取りが待ち受けている。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。