【音羽山親方・春場所総括】新入幕優勝の尊富士は「自分が“勝負師”であることを意識している」 新大関・琴ノ若は「合格点」

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春場所開始まで多忙だった琴ノ若

――新大関として、初優勝も期待された琴ノ若関に関してはいかがですか?

音羽山:初場所はいろいろな重圧の中、一発で大関昇進を決めて、その後、春場所が始まるまでは毎日のように挨拶まわりやイベントで忙しかったようなんですね。

 私も経験がありますが、新大関としての大舞台を控えて、なかなか気が休まらないものなんですよ。そんな中、2ケタ、10勝を挙げたことは、私としては、合格点じゃないかと思います。

 そして、琴ノ若は5月の夏場所から、おじいさん(先代・佐渡ヶ嶽親方=元横綱・琴櫻)の四股名「琴櫻」を名乗ることも正式に決まりました。祖父、父、息子の三代で強い力士として活躍をすることも珍しいですが、おじいさん、お父さんの流れがあっての「琴櫻」。大相撲界ならではというか、日本人ならずとも、心にグッとくる襲名だと思います。

霧島は準備期間が圧倒的に不足

――一方、大関・霧島関は、負傷の影響で負け越し(5勝10敗)となってしまいました。

音羽山:かつて、(陸奥部屋で)兄弟弟子だった霧島は気にかけている力士の1人ですが、今場所は頭から当たっていく相撲が取れなかった。彼は体が大きくないこともあって、頭から当たる相撲が身上ですが、春場所前から首に負傷を抱えていたんです。

 春場所のために大阪入りしてから急ピッチで仕上げたのですが、やはり準備期間が圧倒的に足りなかった。これが負け越しの理由です。

 ただ、師匠・陸奥親方が春場所を最後に定年退職すること(陸奥部屋は閉鎖)、春場所は1年に1回だけで、応援してくださるファンの方がたくさんいることもあって、負け越しても千秋楽まで土俵に上がり続けました。千秋楽は、ギリギリの相撲ながら、大関同士の対戦、琴ノ若に勝って、「次」につながったことはよかったと思います。

霧島も音羽山部屋の所属へ

――新しく興された音羽山部屋も、今場所で2場所目を迎えました。大阪市内でおこなわれた千秋楽打ち上げパーティーには、かつて所属した井筒部屋時代の兄弟子を始め、応援する方々が200人以上駆けつけて、盛り上がりを見せましたね!

音羽山:まだまだ小さな部屋なんですが、多くの人たちに来ていただき、ありがたいことです。4月からは、大関・霧島も音羽山部屋の所属になります。もうすぐ春巡業(3月31日~4月28日)も始まりますし、4月13日の大相撲藤沢場所(神奈川県)では、担当親方としてすでに仕事を開始しています。

 実際に霧島らが部屋に合流するのはその後になりますが、今場所のようにフレッシュな話題で、大相撲界を盛り上げていきたいですね。

武田葉月
ノンフィクションライター。山形県山形市出身、清泉女子大学文学部卒業。出版社勤務を経て、現職へ。大相撲、アマチュア相撲、世界相撲など、おもに相撲の世界を中心に取材、執筆中。著書に、『横綱』『ドルジ 横綱朝青龍の素顔』(以上、講談社)、『インタビュー ザ・大関』『寺尾常史』『大相撲 想い出の名力士』(以上、双葉社)などがある。

デイリー新潮編集部

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