「電車男」の“2ちゃんねる”登場から20年…大ヒットがもたらした「オタク文化」の激変期を振り返る
オタクをカミングアウトする人が続出
そして、2000年代には、ニコニコ動画などオタク文化を牽引するカルチャーが次々に登場した。2006年には、京都アニメーションによる高品質なアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」が話題になり、深夜アニメを視聴する一般人が増え始めた。2007年にVOCALOIDの「初音ミク」が発売されると、ニコニコ動画に作品をUPする文化が広まった。
2009年には、京アニの「けいおん!」の曲が純粋なアニメソングでは初めてオリコンで1位を獲得した。2004年の『電車男』のヒット後わずか数年の間に、現代のオタク文化の核になる作品が次々に登場し、流行となった。ギャル系の雑誌「egg」や「Popteen」でもオタク趣味をカミングアウトする女の子が現れ、シブヤ系、アキバ系などの分類も曖昧なものになっていく。
中川翔子のように、オタク趣味を公言するアイドルが出現したことも重要だろう。筆者は、一般層にオタク文化を普及させる意味で、中川が果たした影響は大きいと見ている。中川は和田アキ子の前に涼宮ハルヒのコスプレで登場し、和田がその振る舞いに唖然とする演出がなされた。中川のキャラクター性は多くの人を引き付け、オタクのイメージを変えることに貢献したと言っていいのではないだろうか。
マスコミもオタク文化を肯定的に扱うように
書き出すときりがないのだが、「電車男」を境に、オタク文化の在り様は一変した。2024年現在、もはや誰しもが何らかのオタクであるし、推し活に興じている。町を歩けば、自分の推しキャラの缶バッジを付けた“痛バッグ”を持った女性と、何人もすれ違う。つつましやかで内向的だった過去のオタクを知っている立場からすれば、この変化にはただただ驚きである。
あれだけオタクをバッシングしたマスコミも、オタク文化を肯定的に扱うようになった。確かに、「電車男」ヒットの直後は、ワイドショーではオタクの偏見を煽る報道も多かったし、“フィギュア萌え族”のような蔑称を作ったコメンテーターも存在した。しかし、2010年代にはワイドショーや朝のニュースでも「ラブライブ!」のライブのレポートや、声優アイドルのインタビューを流すようになり、今ではほとんど否定的な報道は見られない。
これはひとえに、オタクがライトなものになり、一般化したことが要因であろう。そして、近年その傾向が顕著なのだが、オタク相手のビジネスが儲かることに気づいた企業が、相次いで参入してきたためでもあるだろう。コンビニでもアニメグッズが売られているし、クオリティの高いグッズの数も20年前とは比較にならないくらい増えたの は、喜ばしいことである。
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