プロレス通「有田哲平」が説く、初心者に“推し”の魅力を教える方法…「いきなり“長州vs藤波”をすすめてはダメなんです!」

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ラーメンにもプロレスにも「歴史」がある

有田:おすすめしたい気持ちは分かります。実際に、僕も長州vs藤波が大好きだから、「見てくれ!」って思いますよ。自分が夢中になって応援して、どっちが勝つのか固唾を飲んで見守ったんだから、みんなに見てほしい。でも、背景をまったく知らない人からしたら、武藤vs橋本とか長州vs藤波を見せたって面白くないんですよね。普段見ていない人に、いかに分かりやすく伝えられるか。だから、相手の立場に立って考えてあげないといけない。

――ということは、1994年福岡ドームのアントニオ猪木vsグレート・ムタはどうでしょう?

有田:良い! そういうことなんです。プロレスを分からない人が見ても、単純に面白い。知名度がある猪木さんと、毒霧のような映える技を持つヒールレスラーのムタ。これだったら伝わりやすい。桜庭和志vsホイス・グレイシーのすごさが分かるのは、格闘技を見慣れている人であって、普段見ていない人からすれば、ただ長いだけの試合になっちゃう。ボブ・サップの試合をおすすめしたほうがいいわけです。

――咀嚼しやすい方がいいと。たしかに、教える側の“思い”がありすぎると、のどを詰まらせる原因になってしまいそうです。

有田:こっちのこだわりとか熱みたいなものは、いったん置いておかないといけないんですよね。誰かに教えたいときって、自分の思い出補正が入りがち。でも、それって受け取る方からすれば、知ったこっちゃない。僕がラーメンにハマれたのも、赤池先生が丁寧にナビゲートしてくれたから。提案していく段階ってすごい大事。僕の理解が追い付く前に、長州vs藤波的なラーメンをおすすめしてくることもあったけど(笑)。

――優秀な生徒に対して、ときに難題を与えるのも、先生の役割ですから(笑)。

有田:ラーメンってものすごく歴史がありますよね。その流れが分かると、「すげぇ!」「なるほど!」って感動が増す。どこどこのお店がこういうスープを開発して、以後、それが広まって、そこから新しいラーメンに進化した――、それってプロレスも一緒じゃないですか。長州vs藤波って、あの当時は猪木さんを除いて、日本人対決なんてなかったわけですよ。今なら日本人対決は当たり前だけど、当時はすごいことだった。その背景を知らないと長州vs藤波を提案しても楽しめないように、ラーメンにもそういう歴史がある。今は、雪崩式ブレーンバスターは珍しくないかもしれません。でも、初めて鶴見五郎が雪崩式ブレーンバスターをやったときの衝撃っていったら、すごかったんだから。ラーメンにもあるんですよ、鶴見五郎の雪崩式ブレーンバスターが。

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