スタンフォード大学に進学する佐々木麟太郎選手は、「オペラ歌手」でも成功すると思うワケ
パヴァロッティもスポーツマン
もちろん、遺伝の要素が大きいのでしょう。しかし、こんなにも似るのだから、生い立ちが似ているとか、育った環境に近いものがあるとか、後天的な要素も影響しているはずだと考えたくなります。すると、やっぱり――。
パヴァロッティは、後年の太った身体を見ると、想像しにくいかもしれませんが、じつは大変なスポーツ青年でした。レンツォ・アッレーグリ著『スカラ座の名歌手たち』(小瀬村幸子訳、音楽之友社)で、本人がこう語っています。
「その当時(註・19歳のころ)の僕は溌溂たるスポーツマンでしてね、痩せていて、筋肉質で。一日に六、七時間はスポーツに精を出し、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ラグビー、ボクシングと何でもうまかったんですよ」
日本に生まれていたら、きっと野球をやっていたでしょう。
アメリカで羽ばたいたパヴァロッティ
家庭環境はどうでしょうか。麟太郎君のおとうさんは花巻東高校野球部の監督です。子供のころはプロに行く夢も抱いたそうですが、結局、指導者への道を選びました。もちろん麟太郎選手に野球への情熱を注いだのはおとうさんです。
一方、パヴァロッティのおとうさんは、すばらしい声のテノール歌手で、「オペラへの情熱を僕の血の中に注ぎ込んだのは父ってわけです」と、前掲書で息子は語っています。でも、プロにはならず、息子はプロをめざした。なんだか佐々木家と似ていますね。
また、パヴァロッティはデビュー当時からすごい歌手でしたが、世界的なスターになったのは、アメリカで人気に火が点いたのがきっかけでした。アメリカではハリウッドのスター並みの人気と知名度を誇り、1993年にニューヨークのセントラルパークでコンサートを開催したときは、なんと50万人が集まっています。
麟太郎選手のアメリカでの活躍はこれからですが、パヴァロッティはアメリカで羽ばたき、麟太郎選手も羽ばたこうとしています。だから似ているのか、似ているから似た境遇になるのか。どっちが先だかわかりませんが、とにかく似ています。
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