「大谷翔平」と「羽生結弦」 SNS戦略が人生を左右する厄介な時代
「小出しに情報発信」の有効性
「大谷さんも羽生さんもSNSで結婚を公表しましたが、その手法は大きく異なっていたと感じます」
と指摘するのは、数々の大手企業の広告戦略、SNSマーケティング戦略の立案や実施に従事してきた桜美林大学准教授の西山守氏である。
「大谷さんの場合は少しずつ小出しに情報を発信していきましたよね。インスタグラムでの初公表時は日本人女性だと伝え、さらに囲み取材で自ら対応するとも書いた。どのタイミングでどんな情報を出せばいいかを、緻密に計画した印象を受けました。対して羽生さんのように相手の情報を全く出さないと、ファンが変に邪推したり、メディアが勝手に報道を始めたりと、事態の主導権を失ってしまうことになりかねません」
ここでいう「主導権」の意味について聞くと、
「お相手のプライバシーを守りつつ世間の期待にも応えようと、大谷さんはメディアやファンが暴走しないようコントロール、つまりは主導権を握っていた。お相手とのツーショットでいえば、所属球団の公式Xを通じて公表したことで、夫婦がドジャースと良好な関係であることもアピールできていました。著名人が夫婦のツーショットを自ら公表すれば、お惚気(のろけ)や嫌味に捉えられてしまい、熱狂的なファンから反感を買う可能性もありますから」(同)
対して羽生はといえば、
「羽生さんも事態をコントロールしたかったはずですが、お相手に関する情報を完全に秘匿したことで、ファンやメディアの間で消化不良が起きて、結果的に主導権を握り損ねたように見受けられます」(同)
女性ファンの多いアイスショーを生業とする羽生にとっては、いつまでも孤高のイメージを守り続けたい。そうした思いが空回りしてしまったのだろうか。
長い歴史を誇り、巨大ビジネスを運営しているドジャースとは異なり、ほとんど「家族経営」のような形でマネジメントが行われている羽生に、周到な戦略を求めるのは酷なのかもしれないが――。
後編では、彼の人気と優しさが裏目に出た、故郷、仙台の「ずんだ餅」にまつわるトラウマについてのエピソードから、その情報発信戦略を読み解いていく。
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