「百害あって一利なし」インド・モディ首相はなぜヒンズー国家政策をゴリ押しするのか

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ヒンズー国家政策は「百害あって一利なし」

 一方、BJPの主な票田は人口密度が高く貧しい北部だ。この地域はヒンズー語話者が多く、成長から取り残された農村地帯でもある。先述した国内の格差拡大はヒンズー教徒にとって不愉快極まりない話だ。

 モディ氏は国民の大多数を占めるヒンズー教徒向けのアイデンティティー政治を推進することで、その事実を糊塗しようとしているのではないかと思えてならない。

 だが、モディ氏がヒンズー国家化を進めれば進めるほど、南部のハイテク企業家らは国内の閉塞感に嫌気を指し、海外に脱出する動きに出る可能性が高いだろう。

 モディ氏の経済政策を評価する向きが強いものの、ヒンズー国家政策は「百害あって一利なし」だ。日本でもインドブームが生まれているが、同国の政治動向について細心の注意を払うことが必要なのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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