大腸がんで「余命1年」と宣告され、不倫相手は逃げた…60歳夫が今になって知った彼女が消えた意外な真相

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最近わかった“真相”

 娘が同居してはいるが仕事で遅くなることも多い。妻は彼の分の食事は作らないから、彼はほぼ自炊だ。たまに1品、娘に残しておくこともある。妻とはきちんと話し合っていないが、娘を介して「あなたの世話はしません」と言われている。

「許せないんでしょうね。そりゃそうですよ。だけど僕だって本当はホストにはまった件を持ち出したいときがありますよ。お互いごめんね、というわけにはいかないんだろうかと考えたりもしますが、かえって単なる同居人だと割り切ったほうがいいのかもしれない。やっとそう思えるようにはなってきました」

 季衣さんに“捨てられた”傷も癒えてきたところだったのだが、つい先日、娘から季衣さんと別れさせたのは自分だと衝撃的なことを言われた。

「私はママが、今もパパを思っているんだと勘違いしていた。病気になっていちばんつらかった時期のパパのことを季衣さんから聞いていた。ママも心配していると思っていたから、このあたりでパパを帰してもらえないかと季衣さんに頼んだ。季衣さんは自分が二人三脚で病気を治してみせるとはっきり言ったけど、それは妻であるママの役目だって私が言ってしまった。季衣さんが出ていったのは私のせい」

 娘はそう言って泣き崩れた。やっぱりそうか、と彼は感じたという。あの季衣さんがあっさり別れるはずがない。

「娘は、『ママにかこつけて私がパパを取り戻したかったのかもしれない。でも、わかった。ママにはもう愛はない。パパが好きなようにして。季衣さんには私から連絡をとるから』と。でもこれ以上、季衣を振り回したくないんですよ。もういいよ、と娘に言いました。『ママのパパへの態度はひどすぎる』と娘は言うけど、それももういい。近いうち枯れ果てる命なら、今、ここで波風を立てたくないのが本音なんです」

 彼ももう一度、季衣さんを追いたい気持ちはあるようだ。だが、今さらとも感じている。このあと娘は、父のために季衣さんに連絡をとるつもりなのか。再度、彼が家を出ることもあり得るのか。時間が解決するのかしないのかわからないが、自分からは動く気力も体力も今はないと彼は言った。

「季衣とのあの5年間は本当に幸せだった。あれがあるから、今もがんばっていられる」

 ということは、やはり季衣さんには会いたいのだろう。その気持ちを必死に抑えているのか、テーブルの上に置かれた彼の握りこぶしが少し震えていた。

前編【料理をしたら文句、カード明細で発覚した闇…そして、妻との関係が決定的に壊れた“出来事”とは【悩める60歳夫の告白】】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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