料理をしたら文句、カード明細で発覚した闇…そして、妻との関係が決定的に壊れた“出来事”とは【悩める60歳夫の告白】

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「もうキッチンに入らないで」

 ふたりの子に恵まれ、家庭は順調だった。仕事も多少の波はあったが、生活に困窮するようなことはなかった。なにより智絵美さんは家計のやりくりがうまかったから、彼は安心して任せていた。

「僕は家庭の匂いがするような男にはなりたくなくて、結婚後も頻繁に飲み歩いていたし、仕事関係の寄り合いにもよく顔を出していました。今の言い方をすれば、彼女はワンオペで文句も言わず、母として妻として完璧だった。家事をしてくれと言われたこともありません」

 彼は料理が好きだったから、自分の気の向くままにキッチンに入って腕をふるった。子どもたちの大好きなオムライスやカレー、コロッケなども作った。もちろんきちんと片付けまでしていたのだが、あるとき妻が「もうキッチンに入らないで」と訴えてきた。どういうことなのかと尋ねると、「私の居場所がなくなる」と彼女はつぶやいた。

「僕が作るのはせいぜい週に1回くらいです。それでも子どもたちが喜んで『パパ、おいしい』と言ってくれるのは僕にとっても、日頃あまり接していないだけにうれしいわけですよ。だけど妻から見ると、そうやって子どもの気持ちを釣るのはよくないと。ありていに言えば『ごはんで点数稼ぎをするな』ということなんでしょうね。母親として自信をもてばいいじゃないか、子どもたちはママが大好きなんだから、ときどき点数稼ぎくらいさせてくれてもいいだろと冗談交じりに言ったら、彼女は泣きだしてしまった。子どもをひとりで抱え込みたいのかと僕も不機嫌になって……。あのあたりからですかね、妻との関係がギクシャクし始めたのは」

 日頃は家事も子育ても関与せず、週に1回、子どもたちの好きなものを作ってふるまう。そういう夫を見たとき、多くの妻は苦笑しながらも受け入れるものではないだろうか。それなりに生活費はじゅうぶん渡していたと彼は言うし、家事育児と外での仕事の分業だと思えば腹も立たないのではないか。ただ、智絵美さんはそうではなかった。自分の存在価値の象徴であるキッチンに、夫が入り込むこと自体が嫌だったのかもしれない。

「とはいえ、妻は凝った料理は作らない。日常生活では当然ですよね。だからこそ僕が週末、じっくり煮込んだシチューなどを作ると嫌がりました。市販のルーで作ったシチューを子どもたちが食べなくなるって。言いがかりみたいな気がしましたが」

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