水原一平氏の違法賭博問題をテレビ局はどう報じたか フジ記者の強引な取材と解釈に疑問

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波紋を呼んだFNNの「ドアホン」取材

 21日のフジテレビ「イット!」は、水原氏の違法賭博問題をニュース番組として異例な長さで取り上げた。やはり学生時代のバイト先の寿司店の店長にも話を聞いていた。

 番組ではさらに、FNN(フジテレビ系ニュースネットワーク)が、米国カリフォルニア州にある水原氏の父親の自宅を直撃する映像を使用していた。

 水本翔記者(FNNロサンゼルス支局長/関西テレビ)が、玄関前でマイクをドアホンの前に出して尋ねる映像が流れる。

「すみません、一言だけ…。水原一平氏の報道についてちょっとお伺いしたくて…。一平さんが賭博に関与したというのを…」

 水原氏の父親と思われる男性は、かなり怒気を含んで答えているのが伝わってくる。

(男性の声)「知らないよ。俺は何も…」

 これは取材に対して拒絶する声ととれる返答だ。記者は構わずに畳みかける。

(水本記者)「何のご相談も受けていないですか?」

(女性の声)「帰って!」

 水原氏の母親であろうか。これも拒絶の声である。

 この声を撮ったことを確認して、水本記者がカメラマンに頷く様子も映像に残っている。撮れたぞ、というサインなのだろう。これでここの撮影を終えていいというサインだろう。

 テレビ報道に携わってきた筆者の経験から考えると、水本記者はいきなり水原氏の両親宅を訪問したが拒絶された、と考えるべきだと思う。

 ところが「イット!」内のロサンゼルス支局からの生中継に登場した水本記者は、このドアホン越しの映像を使い、「先ほどカリフォルニア州に住んでいる水原氏の父親が賭博に関わった疑惑について『知らなかった』と取材に対して答えています」とレポートしていた。

「取材に対して答えて」いる?

 記者としての経験から言うと「知らないよ。俺は何も…」という声を根拠に、「水原氏の父親が賭博について知らなかった」事実として報道できるものか、疑問に思った。

 取材の状況からして、水原氏の違法賭博について知っていたのか、知らなかったのかを質問し、それに対して相手が考えて回答した、という状況ではない。むしろ取材そのものを拒絶されたと考えるべきだ。「そんなの知らない。テレビに言うことなどない。帰ってくれ」という意味で発言していると思える。つまり、「ノーコメント」という意味だ。

 そもそも取材する側は、この声の主が一平氏の父親であることを確認できて放送したのだろうか。心配してかけつけた友人や知人という可能性はないのか。映像を見る限り、この前後にドアホン越しに会話して確認できたとはとても思えない。そもそも相手との間に会話が成立していない。

 取材というのはある種の信頼関係があってこそ、「確かな事実」を入手できるものだ。水本記者の取材内容を見る限り、筆者にはこれが「確かな事実」だとは思えない。事実をじっくり確認したのか? 確認が「甘い」のではないか? 疑問が強く残る。

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