ネット炎上の象徴だった「嫌韓」が“下火”になった理由…無軌道な「ヘイト」の拡散を抑える“最善の策”とは?

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コロナ騒動で

 そして、空気が変わったのが2019年7月。日本政府がフッ化水素等3素材の韓国への輸出管理の厳格化を発表した時のことだ。韓国が武器製造に使うイランと北朝鮮に横流しする疑惑が発覚したからである。半導体を作るのに必要な素材だが、韓国は日本からの輸入に頼っていた。当時の韓国は日本製ほど純度の高いものは作れず、韓国は対抗措置としてDRAMの輸出規制や日米韓の防衛上の枠組み・GSOMIAの破棄などの報復措置をちらつかせた。だが、ネット上では「どうぞどうぞww」「ぜひ国交断絶してくださいww」と嗤う意見が多かった。

 こうした状況で「嫌韓」が何やら娯楽のようになっていたのが2019年。そしてその半年後に新型コロナウイルス騒動が勃発する。2023年5月に五類化し、一応の区切りはついたものの、3年4ヶ月にもわたったコロナ騒動はすっかり韓国ネタで稼ぐどころではなくなった。

 以来、韓国ネタのうま味を忘れたメディアは刹那的なカネ稼ぎに韓国と嫌韓のネトウヨを利用することをやめた。そして2024年3月下旬、一般的な韓国ネタでは稼げない。もちろんエンタメ関連では稼げるものの、両国間のいがみ合いなどを報じても食いつきが以前よりも悪くなったのだ。海外ニュースでもウクライナ・ロシア、イスラエル・パレスチナ問題の方が関心は高い。もっと言うと米大統領選挙関連話題の方が重要だし関心は高い。

メディア報道の量

 そういった意味で嫌韓の人々も「叩く材料がない」という状態になっている。そして、2年前、あれだけ熱狂的にウクライナを応援し、Xのアイコンにウクライナの国旗の水色と黄色の絵文字を付けた人々もシレッとそれらを外した。結局メディアが積極的に報じるかどうかが嫌韓意識を高めるか低めるかの基準になるのだ。

 メディアの影響については、コロナに対しても藤井聡・京大教授が分析したように、陽性者数や死者数は関係なく「メディア報道の量」が影響していたとの見方が存在する。「嫌韓」を抑えるためには、そして韓国国内の「反日」を抑えるには、メディア報道量をいかに考えるべきか、ということを日韓両政府が協議するタイミングにあるのではないか。

 言論統制というわけではなく、互いのネガティブ報道を必要以上に報じないことで、少なくともネット上のヘイトは減る、ということがこの4年間でよく分かったのだから。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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