「水原通訳」解雇で大炎上も…スポーツ賭博は完全に“悪”なのか? いまこそ熟慮すべきメリットとデメリット(スポーツライター・小林信也)
合法だったら
しかも、スポーツベッティングは「オンライン・ベッティング」といって、試合が始まってからも賭けに参加できる。これまで日本のギャンブルは、競馬、競輪にしろtotoにしろ、試合開始までに投票が締め切られる。スポーツベッティングは試合中も、「次の打者は三振かホームランか」「この投手は最終的に何個の三振を奪うか」といった細かな賭けが楽しめる。つまり、一攫千金を求めるギャンブルというより、観戦しながらよりスポーツを楽しむためのゲーム感覚がスポーツベッティングの魅力のひとつだ。だから、賭け金が100円単位で、配当がそれほど多額でなくても当たれば自尊心が満たされ、スポーツ観戦にいっそう熱が入るという効果もある。
また、今回の事件報道であまり指摘されない見方がある。
それは、水原通訳が手を染めたのが「違法賭博」だから、6億8千万円もの負けを背負う結果となったという点だ。違法な業者は、法律的な縛りもなく、むしり取るだけ取って儲けようとするのだろう。もしこれが合法的なスポーツベッティングだったら、そもそも水原通訳はそこまでの大金を投じることができなかったはずだ。
もうひとつ気になるのは、多くのコメンテーターたちが、「賭け事に手を出したら、ギャンブル依存症になる。だから手を出してはいけない」という論調で話すこと。しかもその言い方がスムーズに受け入れられ、視聴者もそのような気分になっていないだろうか。私はそうした偏った論調に首を傾げる。「お酒に手を出したら、アルコール依存症になる。だから一切飲んではいけない」と言うようなものではないか。
きちんと冷静に判断し、多角的な視点を持った上で、スポーツギャンブルの是非についても語れる環境が醸成されるよう期待する。