「トランプ、バイデンどっちでもいい」…すでに始まっている米中「貿易戦争」 習近平が目論む「TikTok禁止」「制裁関税」をスリ抜ける“秘密工作”の中身
11月の米大統領選を前に、早くも米中の“衝突”が本格化している。なかでも「TikTok」や「関税」をめぐって、双方の舌戦はヒートアップ。実はそのウラで、習近平政権は「対米包囲網をすでに構築済み」とされ、“迎撃態勢”を抜かりなく整えていると専門家は指摘する。
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3月13日、米下院で圧倒的多数の賛成で可決された動画投稿アプリ「TikTok禁止法」に続き、それを補完する法案が20日に可決された。
「アメリカ国民の個人情報を“敵国”やその管理下にある企業へ提供・売却することを禁じる法案が同日、米下院で可決。念頭にあるのはもちろん中国で、TikTok禁止法とともに、中国企業を通じて米国民の個人データが中国政府へ流出する安全保障上の懸念が背景にあります」(全国紙外信部記者)
禁止法案はTikTokを運営する中国企業「バイトダンス」に対し、165日以内に事業の売却を迫るもので、中国側は「言論侵犯」や「盗人の論理」などと猛反発している。
「TikTokのアメリカ国内での利用者は約1億7000万人にのぼり、とくに10~20代の若者に絶大な人気を誇っています。実際、バイデン大統領自身も若年層への浸透をはかるため、今年2月にTikTokの公式アカウントを開設したばかり。すでに米議会周辺で若者を中心とした抗議活動が行われるなど、若い有権者からの反発を不安視する声は根強く、上院での法案成立は予断を許さない状況です」(同)
エスカレートする情報戦
それでもバイデン政権がここに来て攻勢を強める裏には、中国政府がTikTokを通じて“フェイクニュース”や“分断を煽る”動画を流し、大統領選へ介入することに強い危機感を抱いているためだ。その点について、中国事情に詳しいインフィニティ・チーフエコノミストの田代秀敏氏が興味深い指摘をする。
「ロイター通信が14日、複数の米当局者の証言をもとにトランプ氏が大統領だった2019年、米CIAが中国のSNSなどを通じて習近平政権に対するネガティブ情報を流すなどして、秘密裏に“対中情報戦”を展開していたと報じました。当然、中国当局者もこの報道を確認しており、“アメリカがやってるなら”と今後、対米情報戦において“遠慮がなくなる”だろうことは容易に想像がつきます。中国側の狙いはアメリカの分断を深め、国力の衰退を促し“自滅”を待つこと。つまりアメリカ側の懸念には相応の根拠があるということです」
実はTikTok問題以上に、大統領選の主要テーマになると見られているのが「対中関税」をめぐる議論という。トランプ前大統領は中国からの輸入品に「一律60%」の高関税を検討しているだけでなく、中国メーカーがメキシコで生産した自動車に対しても「100%の関税をかける」と表明。対中強硬姿勢を日に日に強めている。
「トランプ氏がメキシコでつくられる中国車を標的にしたのは『アメリカ人を雇用せずに税制優遇措置だけを狙ってる』と主張しているためです。バイデン大統領も『米国の自動車労働者を守る』と宣言し、中国製EV車に対する輸入規制を検討中と報じられています。大統領選で勝つには中国への強硬姿勢を打ち出さざるを得ず、対中関税が争点の一つに浮上するのは避けられない情勢です」(前出・記者)
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