東京一極集中が加速!? 万博のウラで音楽関係者が危機感…ライブの“大阪飛ばし”の現実味

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キャパシティの点では見劣り

 だが、これでも、採算の取れるライブを関西で開催することは難しいという。「コンサートプロモーターズ協会 関西支部会」の担当者はこう明かす。

「最大収容人員といっても、ライブでは機材やステージを配置しますから実際の客席数はぐっと少なくなります。1万人収容といっても実際の客入りは数千人となるでしょう。現状では、首都圏の大規模会場と比べると、キャパシティの点では見劣りする会場が多いです」

 関西のライブ会場の代表格といえば大阪城ホールで、最大収容人員1万6000人。ただし、ステージの中身次第では、ライブ開催時のキャパシティは1万人を下回ることもある。しかも、1983年の開業から40年が経過していて、老朽化も進んでいる。

 万博記念公園で計画中のアリーナは関西最大級のキャパシティとなる見込みだが、機材とステージが設営されれば、収容人員は1万人程度にとどまるとみられる。

 一方、首都圏ではここ数年で大型アリーナ施設が続々と開業している。横浜市では、2万人規模のKアリーナと1万人規模のぴあアリーナMMが、みなとみらい地区に開業した。来年には東京・お台場にトヨタアリーナ東京、今春には千葉県船橋市のららぽーとTOKYO BAY近くにLaLa arena TOKYO-BAYが、どちらも1万人規模のアリーナとして開業する。川崎市でも2028年開業を目指して、川崎駅近くに1万5000人規模のアリーナ建設の計画が動いている。

 いずれも、収容人員は、機材などを一切配置せずに客席を詰め込んだ数字で、実際のライブ開催時の動員数は少なくなる。とはいえ、従来のさいたまスーパーアリーナや横浜アリーナ、東京五輪に合わせて開業した有明アリーナ、東京ガーデンシアターなどもあり、首都圏の1万人弱~2万人規模の会場は、関西と比べると圧倒的に多いのが現状だ。

機材やスタッフの移動費問題

 また、関西では、機材やスタッフの移動費の問題も抱えている。

「ライブスタッフ数十人の移動費と宿泊費、さらに機材運搬費がかかるので、関西で東京の1万人動員と同等の収益を上げようとすると実動1万3000人程度が見込める会場でないと難しいでしょう。名古屋であれば東京への日帰りも可能なので宿泊費を浮かせられますが、関西では前泊から2泊を要します」(前出の担当者)

 ライブエンタメの現場の視点からは、関西で進行中のハコモノ計画は中途半端に映る。

「海外では大型アリーナは2万人動員クラスが標準になっています。それでも首都圏では見込める動員数に応じて会場を選べますが、関西では1万人収容サイズで頭打ちです。関東と関西で同じ収容力の会場を使うなら、移動費がかかる関西で公演をするメリットが薄く、せっかく建てたハコの稼働率が落ちてしまいかねません」(前出の担当者)

 首都圏に続々建てられる新しいアリーナを見ていると業界の景気は良さそうに見えるが、“ライブの東京一極集中”という問題も浮上している。大阪・関西万博を控え、関西のデベロッパーや行政も威勢よくハコモノ整備に意気込むが、エンタメ業界の声に応えきれているだろうか。

デイリー新潮編集部

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