「金持ちの家に生まれた苦労は知らねえだろ」 奇異の目で見られていた麻生太郎副総裁はいかにして権力を手にしたのか
「今の麻生さんの弊害は…」
前出の泉氏も言うのだ。
「世間やメディアからすれば、引退してほしい政治家ということになるでしょう。総理と総裁だけでなく、副総理と副総裁も歴任。“あと議長をやれば、5冠王だ”なんて本人も言っていますが、今潔く身を引けば晩節を汚すことはない。誰でもそう思うはずです」
ただし、として、
「それでも政治をやるんだ、というのが麻生さんなんですね。そうした特異なキャラクターが彼の本質。その意味では大好きなマンガの主人公みたいな人かもしれません。あるいは、政界の実力者が持つ業(ごう)のようなものかもしれませんね」
前出・御厨氏の感想は、
「外からは、老人が権勢を振るっているかのように見えるのは事実。しかし、当人からすれば、“まだまだ下が育っていないから俺が育てねば”という意識なのでしょう。ですが、世間からは、80を超えて君臨している政治家がいるというのは、度を越した長老政治に見えます」
御厨氏は、麻生氏はデモクラシータイプの政治家ではないと評する。
「アリストクラシー、貴族主義の人。だから下々より俺の方が仕事ができるという自負がある。しかし、新しい人が出てこられるよう道を開くのが長老の役割のはず。麻生さんにその気がなくても、注文を付けただけで周りが忖度(そんたく)し、意向通りにせざるを得なくなってしまっている。それが今の麻生さんの弊害なのです」
麻生氏が常々、吉田が政界を引退した年まで現役を続けたいと述べてきたのは永田町では知られた話。その年とは85――。
敬愛する祖父に倣い、スパッと身を退けるか、はたまた権力にしがみつき晩節を汚すか。その答えはあと1年余りで見えてくる。前編では、「政権の生殺与奪権のひとつを握っている」と言われる麻生氏の“影の権力者ぶり”について報じている。
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