平松愛理、「平成」でチャート圏外の作品が「令和」で再評価 阿久悠さんとの楽曲は「最初はサンバだったんです」
記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス 平松愛理(2)
この連載では、昭和から平成初期にかけて、たくさんの名曲を生み出したアーティストやその関係者にインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。
今回は、2024年でデビュー35周年を迎えた平松愛理へのインタビュー後編。Spotify再生回数ランキング上位の「部屋とYシャツと私」「Single is Best!?」「素敵なルネッサンス」に続く、人気曲や隠れた名曲について、たっぷり語ってもらった。
アルバム「Erhythm」はオリコンで初の週間1位に! スタッフには「感謝しかない」
Spotify第5位と第6位には、ともに1992年にリリースされたシングル「マイ セレナーデ」と「もう笑うしかない」が並んだ。いずれもオリコンで週間TOP10入りはしていないが、これらを収録したオリジナルアルバム「Erhythm」は、同年にヒットした「部屋とYシャツと私」が未収録でありながら、初の週間1位を獲得。累計30万枚を超える大ヒットとなった。
「マネージャーさんから“オリコン週間1位です”と言われたときは、自分でもよくわかっていなくて、とりあえずリラックスするためにカーペンターズを聴いていました。『部屋とYシャツと私』が皆さんによく聴かれるようになった時期も、テレビでは新曲の『マイ セレナーデ』と『もう笑うしかない』を歌ったことが良かったのかなと思うので、当時のスタッフの方々には感謝しかないですね。ずっと、“アルバムが売れるアーティストにしたい”と言ってくださっていたんです」
この2曲は、「マイ セレナーデ」が車のCM、「もう笑うしかない」が保険会社のCMと、いずれもタイアップがついている。90年代のJ-POPは、ドラマ主題歌をはじめ、何らかのタイアップがないと、CDケース上にシールで表記されることもなく、CDショップの入荷枚数にも大きく影響するほどだった。その反面、タイアップでは制作上の制約が発生することもあるが、平松としては、その状況をどうとらえていたのだろうか。
「私は、他のアーティストさんに楽曲提供する場合や、こうしたタイアップのときなど、何かしら制約があったほうがイメージが湧くこともあります。
『マイ セレナーデ』は、TOYOTAの『セレス』のタイアップとしてお話をいただき、歌詞中に車の名前を入れてほしいと言われました。ただ、例えば ♪I love セレス~♪ と唐突に歌い出すよりも、自然に歌詞が入ってくる感じにしたくて。 ♪say lesson~(=『セレス』)♪ と聞こえるようにしつつ、内容は「あなたに出会うまでの恋はすべて、このための練習だったよ」と今のパートナーと笑い合っている、というものにしました。
『もう笑うしかない』のほうは、後からタイアップを付けていただいたのでゼロから作りましたが、恋と仕事の両立に悩んでいる方々が多いと感じていたので、それを歌にしようと思ったんです。OLは未体験だった分、事前にたくさんリサーチしましたね」
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