鳥山明さんはフランスでいかに愛されていたか 大統領も首相も追悼、ドラゴンボールが与えた凄すぎる影響
「親日」はドラゴンボールのおかげ?
Liberation紙は、一面をオレンジ色の背景にした大きな孫悟空のイラストで鳥山氏を追悼、記事も3ページを割いていました。
「作品に加え、重大なことは、鳥山作品が無かったら他の多くの日本の偉大な漫画作品がフランスで出版されることはなかった、もしくは何年も遅れただろうということです」
「彼の計り知れない大きな貢献のひとつは、出版社に失敗する権利と大胆さを提供してくれたことです」
「21世紀に青少年を対象にした文化的作品のほぼ全ては鳥山明の力強いイメージの影響を受けています…鳥山明は、おそらく現代に最も大きな影響を与えた日本人アーティストでしょう」
と評しています。実際、フランスのクリエイターたちにも、鳥山氏から影響を受けたという人は少なくありません。
それがもっともわかりやすいのは、ラッパーのDemi Portionです。「Dragon Rash」という曲は、孫悟空のコスプレをしたDemi Portionのイラストがジャケットで、MVにはドラゴンボールのキャラクターなどが登場します。
732万人の登録者を持つユーチューバーのInoxtagは、2024年にエベレスト登山に挑戦すると宣言していますが、彼はつねづね「Shonen(少年)スピリット」に関して発言しています。彼は孫悟空のような少年漫画のヒーローが自分の限界を超える挑戦をすることから影響を受けていると認めています。いわく、少年スピリットを持ったヒーローたちは、自分のいる分野で最高になるという目標を持ち、限界を超えることに挑戦しているとのことです。
フランス人のインフルエンサー達を見ると、ドラゴンボールは単なる子供時代の思い出ではなく、今もいきいきと彼らの思いや作品、思想に入り込んでいる印象を受けます。それを表現し、他者に公にすることを恥ずかしがらない。国民性の違いかもしれませんが、日本での読まれ方との違いといえるかもしれません。
そして記事やコメントでよくみられるのが「日本への情熱の原点はドラゴンボール」という意見。作品をきっかけに、日本や漫画に興味を持ったり好きになったりしたフランス人は多いようです。
たしかに筆者が付き合う人たちをみても、ドラゴンボールのアニメ放送が始まる世代より上のフランス人は、日本に特別な興味がない人が多いです。逆に40歳前後より下の世代は、小学生も含め、ドラゴンボールや他の漫画を通して日本に関する何かしらの知識や興味があって、そこから会話が膨らむこともよくあります。
「親日」のイメージが強いフランスですが、そのきっかけにドラゴンボールも大きく関わっているのでしょうか。作品そのものの力でファンの心を掴んだだけでなく、日本という国のイメージにまで良い影響を与えてくれていたと思うと、感謝と畏敬の念に堪えません。