法廷で不利になると「今日はやめてもらいたいね~」 4人殺害の「連続強盗殺人犯」が“119回”の公判を経てたどり着いた「意外な結末」

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「頭ぶつけた、痛くてしょうがない!」

 ようやく事件に関係する話も聞かれるようになった。9月1日の公判では逮捕時に金を持っていた理由として「たしかさあ、競馬で払い戻しした金だったんだけどなー」と“万馬券を当てた”などと話す。ところが、渋谷駅に乗り捨てられていた不動産会社社長のワゴン車について質問がおよぶと、池内は頭に手を当てながら、突然こんなことを言い出したのだ。

「ちょっと、調子悪い!」

「え~、悪くて、しょうがない!」

 さらにこう続ける。

「え~と、頭痛いんだけど、医者、申し出たかったんだけど、東京拘置所でさ、しょうがないんだけど、頭痛くなって、別に、頭ぶつけたわけじゃないんだよね。診察申し込みしなさいって言われたんだよ。で金曜、申し込みしたのね。それから、まだ、医者、診察申し込みしますって言ったけど、まだ、診察来ない。頭痛くなって、おかしい! 頭ぶつけた、痛くてしょうがない!」

 弁護人が「今も痛いの?」と尋ねると「そう! 調子悪くてね~。今日はやめてもらいたいね~。頭痛くてしょうがないね~」と求め、一旦休廷したのち、閉廷となった。

「こういう体調で聞いてもキリがないんで、今日はこれで終わりに……」と言う弁護人に、裁判長は「あと5回で終わらせてください」と厳しく伝えたのだが……。同年12月4日、池内が拘置先の東京拘置所で死亡したと報じられた。64歳、咽頭がんだったという。東京地裁は公訴を棄却。最後に出廷したのは11月。これまでの公判は計119回に及んだ。全ての罪を否認したまま死亡し、事件は終わった。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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