法廷で不利になると「今日はやめてもらいたいね~」 4人殺害の「連続強盗殺人犯」が“119回”の公判を経てたどり着いた「意外な結末」
さらなる「余罪」
夫妻が殺害される5日前の午後、同じ新宿区では何者かがたばこ店に押し入り77歳の女性店主を殺害して金を奪うという別の強盗殺人事件が起こっていた。現場に残された足跡が池内の靴と一致。靴に付着した血痕の血液型も女性店主のものと一致した。こうして池内は、新たに強盗殺人容疑で再逮捕された。
2件の強盗殺人事件を起こし3人を殺害したというだけでも大ごとなのは言うまでもない。ところが、池内にはさらなる余罪があった。2年前の1999年に、別のたばこ店でも店主を殺害し、現金入りのポシェットを奪っていたのだ。「現金を奪うつもりで殺したのは間違いありません」と容疑を認めた。
こうして最終的に被害者4名の強盗殺人3件で起訴された池内。警察での取り調べにはいずれも容疑を認めていたが、裁判では否認の姿勢を見せる。2001年9月、東京地裁での初公判で、不動産会社社長夫妻の強盗殺人については黙秘。追って開かれた公判では2件のたばこ店での強盗殺人について、いずれも「心当たりがない」と述べた。以降、裁判は2008年まで続くことになる。
“引き延ばし工作”に裁判長も激怒
結局のところ、池内は公判で3件の強盗殺人全てを否認した。当時はまだ裁判員制度導入前で、被告人が否認している重大事件では裁判の進みは遅かった。筆者が傍聴を始めた2005年当時も公判はのんびりと続いており、「長く続いている裁判」として傍聴人の間で話題になっていた。
これほど長引いたのには弁護人の対応も影響していたようにみえる。法廷に入ってみると、検察側の証拠請求に対して弁護人が「反証の準備のために時間をいただきたい」と述べ、次回期日を2ヵ月先に延ばしてほしいと求めたり、また検察側の証拠に「違法収集証拠である」と異議を唱えるなどといったやりとりが繰り返されていた。そのうえ2007年7月、池内は突然、4人の弁護人を全員解任して公判がしばらくストップしてしまったのである。こうして待つこと1年弱、08年5月にようやく再開した公判では、なんとまた同じ弁護人が池内の後ろに座っていた。同じ弁護人を選任するならば、なぜ解任したのか……、という根本的な疑問が湧くなか、弁護人は「これから改めて無罪の立証を行っていく」と一方的にリスタート宣言。さらに「被告人は耳が悪いという特性があるので審理は短時間でお願いしたい」という注文もつけた。
あからさまに感じられる“引き延ばし工作”に裁判長も業を煮やしたのか、ついに大声で問いただした。
「この事件、平成13年(2001年)に起訴されてるんですよ? 去年(2007年)の6月までに開かれた公判は108回! かなり長い間活動されてたじゃないですか。それで1年間、公判が止まっておったわけですよ。それで? 1日の時間、そんなに長くできないというんですか?」
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